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2014.01.26
今回の視察では、従業員数十名ほどの事務所から、数百名の事務所まで、大小さまざまな規模の代理人事務所を訪れました。訪れたのは10月下旬、初日は20度ほどのさわやかな秋晴れの日。ところが、気温は日を追うごとに下がり、最終日には最低気温は3度(東京ではその日の最低気温は16度)までに。たった1週間のうちに進んだ紅葉に魅了されたのはもちろんのことですが、研修メンバーがそれぞれ持参した手袋やカイロが役立ったことは言うまでもありません。
包袋の電子化
通信手段として、日本では依然としてファクシミリや郵便を支持する企業は少なくありませんが、アメリカでの主流はE-mailなどの電子によるもの。大規模な事務所では、メインのメールアドレスに送られるメールは日に500~600通にものぼるそうです。さらに、USPTOとの電子によるやり取りが浸透し、包袋を電子化する事務所が増えてきているようです。今回の訪問先の中にも紙包袋を廃止し、電子包袋のみとする移行段階にある事務所がありました。
包袋といえば、日本では二面見開きで、海外代理人やクライアントから受領した書簡をそのまま時系列で綴じていくのが一般的ですが、アメリカの事務所の多くは、三面タイプの三つ折り型。左側に対クライアント、中央に対特許庁書類、右側にその他、たとえば図面や文献などを綴じていきます。対クライアントと庁書類が別々に綴じられているので、やり取りを理解するのに戸惑うように思いましたが、重要な庁書類が1か所に纏まっているので、案件の進捗状況が簡単に把握できるそうです。
視察した事務所のなかには、電子包袋を三面配置のかたちでパソコン画面に表示させ、紙包袋と同じ感覚で電子包袋システムを使用しているところもありました。また、電子包袋システムが無くとも、全ての書類をPDF化することで、実質、電子包袋と同様のスタイルで業務を行っている事務所もありました。
電子化が進んでいる事務所では、誰もが効率よく働ける環境を目指し、全スタッフに対してユーザーフレンドリーなシステムを構築するなどの対応が行われていました。さらに、PC訓練用の特別室を設け、スタッフに対する電子システムの講習会を行っている事務所もありました。
事故防止策
包袋以外にも、期限管理などあらゆる場面で電子化がすすむと、個々のデスクで仕事をする時間が多くなります。こうしたコミュニケーション不足によるミスへの対策も重要視されていました。クライアントごとにマニュアルを作り、情報を電子化して共有するという事務所があれば、特定のクライアントについてはチームを組んで対応し、チーム外のスタッフはその案件に介入しないという事務所もありました。また、出願、IDS、特許査定など、業務ごとに専門部隊を設けて効率良く事務処理を進めるという所もあり、事務所の色に応じて対策が講じられている印象を受けました。
開放的なオフィス
訪問したどの事務所の特許弁護士も自身の個室をもっていましたが、その多くはドアが開けられていて、部屋の前には担当事務のデスクがありました。「コミュニケーションが非常に活発な環境だよ」と、ある代理人スタッフに言われたとおり、どの事務所もお互いの顔が見やすく、声をかけ易い印象を受けました。
研修を終えて
今回の視察では、特許弁護士から技術関連の意見を間近で聞くことができただけではなく、事務の方々と交流をするという滅多にない機会にも恵まれ、大変有意義なものとなりました。「実はね、電子包袋にはまだ馴染めないのよ」と、苦笑いしつつこっそり(?) 打ち明けられる場面もあり、こうした肩肘張らない交流には嬉しさをも感じました。
業務の電子化が進む一方で、face-to-faceで仕事をする場面が少なくなりがちだからこそ、チームメンバー同士のコミュニケーションや風とおしのよいオフィスの環境づくりが重んじられるのではないでしょうか。新たな年を迎えましたが、今後も社員同士が協力しあい、よりお客様のニーズに応えられるようなサービスへ繋げられたらと思います。
記事担当:高野、半澤、林、湯川
編集:杉田、長谷川、田中