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2014.06.23

【ASEANプロジェクト2014】 [ 1 ] シンガポール、フィリピン、ミャンマー 訪問記(後篇)

NGBでは、お客様の関心が高まる東南アジア諸国の知財情報をアップデートするため、ASEANプロジェクト2014を立ち上げました。各部実務スタッフ総勢19名が訪問団を結成、5つのチームに分かれて各加盟国をまわっています。表題の3ヶ国には、外国特許出願実務スタッフ(中辻、加藤、森田)が「早期権利化」をテーマに携え、5月11日~ 5月18日にかけて訪問して参りました。後篇の本稿では、フィリピンとミャンマーの事情をご報告します。

=>前篇はこちら

[フィリピン]
フィリピンは7000以上の島々から成る島国であり、ASEANでは唯一のキリスト教国。その影響もあってか、フィリピン語だけでなく英語も公用語となっている。高層ビル群が立ち並ぶ首都マニラの中心部は整備されていて綺麗であったが、交通状況は良いとは言えず、渋滞が日常的に多発している模様。実際訪問した際も、中心地へ向かう往路は渋滞がなく20~30分で着いた距離が、復路は渋滞に巻き込まれ2時間かかってしまった。また人口増加のスピードに対して雇用環境が整っていないのか、道中にはスラム街と見受けられる場所を何箇所か見かける。

2012年03月12日から日本国特許庁とフィリピン知的財産庁間で、特許審査ハイウェイプログラム(Patent Prosecution Highway, PPH)の試行的実施が為されており、JP-PPT及びPCT-PPHを利用することが可能となっている。まだ実施されたばかりなので、具体的な効果が分かるほどの実績はまだ出ていない様子。フィリピン知的財産庁の関係者から受けた説明では、引き続きPPHを活用していく方針とのこと。

PPH以外の早期権利化の手法としては、対応他国での認可情報提出が使われる。同一の発明が対応他国で認可となっている場合に、当該対応他国での関連書類(英語又はフィリピン語)を提出するとともに、フィリピン出願のクレームをその対応他国の認可クレームに合わせる補正を行うことで、早期権利化を図ることが出来る。出願人が早期権利化に関して積極的な働きかけを行っていない場合でも、審査段階中に審査官から出願人に対して、他国の認可情報を提出するよう要請することもある。一口に早期権利化といっても、他にどこに外国出願があるか、フィリピン出願の審査のタイミングと対応他国の認可タイミングが合うかなどなど、実務的なノウハウが重要であると感じた。

[特許第1部 森田のぞみ (フィリピン記事担当)]

[ミャンマー]
アジア最後のフロンティアとも言われるミャンマーは2011年3月にテイン・セイン政権が発足、急速に民主化が進み、海外の投資を受け入れる体制を整えつつある。大都市ヤンゴンの中心にはシェダゴンパゴダという寺院がある。昼は暑すぎるため(ヤンゴンの平均気温は35度を超える)、夜に訪れるのがいいとの代理人のお勧めどおり、夜は幾分涼しくきれいにライトアップされていた。街中では日本車が多くみられたが、日本で中古で仕入れたものをそのまま売っているのか、一部の車は冬用タイヤを装着している。

今回の訪問の目的が「早期権利化」とはいえ、そもそもミャンマーはASEAN加盟国で唯一、基本的な知的財産法(特許法、意匠法、商標法、著作権法)が存在していない(著作権法(1914年)は存在する)。ただし先の記事でも紹介したとおり、登記法に基づき特許、意匠、商標を登記し、これを新聞、雑誌等で公告(Cautionary Notice)を行うことで、実質的に権利を発生させることが出来る。この権利に基づき、特に商標に関しては権利行使の事例は少なくないようである。 今回訪問した事務所では、新聞に公告された特許、意匠の事例を見せてもらった。 単に新聞公告といってもノウハウがあるようだ。

一方で、今年こそ知的財産法が制定されるのではないかと注目されている。2013年に設定されていたTRIPS協定の履行義務(知的財産法の整備)は7年間延長されたが、先月(2014年5月)第12ドラフトがAttorney General Officeへ送られた(Myanmar Times 2014/5/18)。この後、Cabinet->Parliamentを通過すると制定となる。制定時期は未定だが、今年中には通過するとする見方が多かった。今年MyanmarはASEAN会議のChairを務めていること、2015年より始まるASEAN Economic Community (EC)も理由の一つである。 一方で、今年通過しなかった場合には、来年は選挙の年であり、更に遅れることを示唆する代理人もあった。 なお、施行時期は、特許、意匠、商標で同時ではなく、その中でも商標が早く施行されるとの見方が強い。 

[特許第1部 中辻啓 (ミャンマー記事担当)]

こうして集めた現地最新情報は、各種実務を通じてお客様にフィードバックして参ります。 アジア関連でお困りごとがあれば、まずはNGBに !どうぞお問合せ下さいませ。

マニラ市内の様子
フィリピン知的財産庁 (ヒューレットパッカード社と同じビルに入居している模様・・・)
ヤンゴン市内の様子
新聞に公告された「権利」の事例 (左は意匠、右は特許)

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