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2014.08.23
第3チームは外国特許出願実務スタッフ4名と特許年金管理スタッフ2名の混成部隊。本稿では、前・中・後の3パートに分けて各々有益な情報をお届けします。
[前篇] ベトナム特許出願
[中篇] インドネシア特許出願
[後篇] インドネシア年金管理
[中篇] インドネシア特許出願
[インドネシア雑感]
インドネシア共和国は、大小あわせて一万数千の島からなる島国である。人口も2億3000万人を超え、ASEAN諸国の中でも最大の規模を誇る。7月には十年ぶりに大統領が交代する選挙が行われたが、そのちょうど一月ほど前に、首都であり最大の都市であるジャカルタを訪れた。空港から中心街までは広い道路が整備され、中心街の大通り沿いには高層ビルが立ち並んでいた。未だ建設中のビルもそこかしこに見られ、急速に発展する都市の姿が印象的であった。しかし、裏路地にはまだバラックのような住宅があり、大通りで渋滞する車の間を縫って物を売りに来る露天商に遭遇し、貧富の差が残っている部分も感じられた。また治安も決してよくはないようで、ホテル、オフィスビル、ショッピングモールなどに入る際には、空港並みのセキュリティチェックを受けた。
インドネシアの特許出願では、審査請求をしても最初のオフィスアクションがなかなか発行されないという事態にしばしば直面する。一方で、インドネシアは2013年6月から日本特許庁との間でPPHを開始している。またASEAN諸国では各国の審査結果を互いに活用しようとするASPEC(ASEAN Patent Examination Co-operation)という取り組みがあり、インドネシアもこれに参加している。現在の審査の現状とこれら新たな取り組みについて知るため、まずは現地の特許事務所を訪問した。
審査の遅れは現地特許事務所においても苦慮しているようであり、特許庁は多くの審査未着手の出願(バックログ)を抱えているとのことであった。また、他のASEAN諸国で見られるような審査促進制度(例えば、対応する他国の特許出願が認可となった場合に、その情報を提出し、その認可となったクレームに合わせる補正を行うことで、早期に審査結果を得られる制度)は定められていない。しかし実務上は、同様の手続きを取ることで審査を促進する効果が得られるとのことであった。一方、PPHやASPECについては、インドネシア特許庁が受付を始めてから日が浅いこともあり、現地特許事務所も動向を見守っている段階であった。特にASPECについては、取り扱った経験のある事務所が少なく、まだ広くは浸透していない印象を受けた。
[インドネシア特許庁]
ジャカルタから車で1時間ほどの郊外タンゲラン(Tangerang)にあるインドネシア特許庁を訪れ、審査官の方々から直にお話を聞くことができた。その印象として、審査の遅延に関しては審査官の知識が先端技術の発明に追い付いていないという側面もあるようだ。特に、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、ソフトウェア等の発明では審査が難しいという声が聞かれた。この現状からも、上述のように対応する他国の出願の情報を出願人の側から積極的に提供することは有効であるように思われた。PPHに関しては、既に多くの申請を受け付けており訪問当時でも数件が実体審査の段階にあるとのことだった。一方で、ASPECの申請数は少ないようである。PPHまたはASPECを申請して特許となった出願はまだ無いとのことで、引き続き現地からの情報を集めていきたい。