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2014.08.26

中国特許調査会社立ち上げと現地スタッフへのトレーニング前篇: なぜNGBは調査会社を広州に置いたのか?

日本技術貿易株式会社は、近年出願件数が急増している中国特許公報を原文で調査を行いたいという国内クライアントのニーズに応えるべく、2011年に中国広州市に専属の特許調査会社を立ち上げました。本稿では、中国調査会社立ち上げの背景と、所在する広州市の環境をわかりやすくQ&A形式で紹介させて頂きます。

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Q: 広州市はどのような場所ですか

A: 中国南部の広東省の省都である広州市は、1978年の改革開放政策以降、いち早く経済技術開発区が設置され、中国国外から、資本・技術が入ってきました。あらゆる面において常に中国の先端を走ってきました。現在、広州には、大手自動車メーカーをはじめとする多くの日系企業が存在します。中国国内の2013年のGDP(国内総生産)の省/管轄市ごとの比率をみても、北京のGDPが中国全体のGDPを占める割合の約3.4%であるのに対し、広州のある広東省のGDPは中国全体の約10.9%と高く、中国大陸の中でもっとも高い数値です。また、広州市には、華南理工大学や中山大学など、理工学を有する名門大学や中国科学院に所属する研究機関が存在しており、中国全土から優秀な理工系の学生や研究者が広州に集まってきております。ちなみに、特許調査会社の調査スタッフにも、地元の大学出身者が多数います。

Q: 科学技術に関して興味深いトピックはありますか

A: 2014年6月に発表されたスパコンの世界ランキング「TOP500」(年2回発表)で、中国のスーパーコンピューター「天河2 号」が3連覇を果たしました(http://www.top500.org/lists/2014/06/)。何とこのスパコンは広州市にあります。「天河」は広州市の一つの区ですが、英語でMilky Wayとも訳され、銀河、天の川を意味する言葉です。そのほか、世界最大規模の生物科学研究機関である、BGIグループ(深セン華大基因研究院)は隣の深セン市に本社を構えております。同社は、2003 年に SARS ウイルス、2011 年にはドイツで発生した大腸菌O-104のゲノム配列をいち早く解析したことでも知られます。現在は1,000 人ゲノムプロジェクトや国際がんゲノム解析プロジェクト等、世界的にも有名なプロジェクトの一員として共同研究等を実施しています。

Q: 知的財産についてはどうでしょうか

A: 意外と日本の皆様に知られていないと思いますが、出願人の所在地別に見ると、中国出願件数1位を占めるのは北京でも上海でもなく、広州の企業(出願人)です。2013年までで、広東省の累積専利出願件数は160万件、登録件数は102万件、中国1位となっております。また、PCT国際出願件数は前年度より25%が増え、11,525件なっており、12年連続で中国1位です。驚くことにこれは中国全体の件数の55%です。また、有効登録商標の件数は19年連続で中国1位、商標の国際出願件数も1位となっております。

Q: どのような中国企業が出願しているでしょうか

A: 特に顕著なのは、大手通信機器会社です。具体的には、ZTE(中興通訊),華為技術有限公司 (Huawei Technologies Co. Ltd)」です。2013年の国際特許出願件数では、ZTE社が約2300件で2位、Huawei社が約2090件で3位です。ちなみに、ZTE社とHuawei社はいずれも広東省深センに本社を置く会社です。また、電子、自動車、素材企業の出願件数も多いです。なお、Huawei社の出願統計については、以前に弊社記事でも紹介させて頂きました。

Q: 特許の訴訟はどのような状況ですか

A: このグラフを見ていただければお分かりですが、提訴件数は広東省も広州市も中国トップです。中国全体でみても、特許に係る訴訟件数も出願件数の増加に伴い増加傾向にあります。外国企業が巻き込まれた特許侵害訴訟も数件ありました。上のグラフは、中国特許訴訟が提訴された地区(省/直轄市)のランキング、下は、中国特許訴訟の提訴を受理した人民法院(裁判所)の受理件数のランキングを示しています。
出典:IPPH 「中国専利侵害訴訟状況の研究報告(1985ー2013)」

Q: 最後に、知財以外で広州のアピールポイントがあれば

A: お勧めは広東料理です。ざっくり言いますと、広東料理は魚介類の料理が多く、四川や北京に比べてあっさりした味付けのものが多いので、日本人好みといえるのではないでしょうか。また、広州は美食の街と言われております。日本の皆様にも愛されている飲茶(ヤムチャ)はここが発祥地です。お茶を飲みながら豊富な品数の点心が食べられます。味が優しいので老若男女問わずお召し上がりいただけます。また、広州の都心部には中国全土の料理が集まっております。日本料理店の数も中国トップクラスです。広州中心街にある広州東駅の近くにはドイツビアガーデンやイタリア料理店もあります。

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特許調査会社設立後、当社IP総研は、現地調査会社のスタッフに特許調査業務を教育するため、複数回にわたり社員を派遣し、トレーニングを行ってきました。調査対象となる技術の理解と、その技術に合わせた特許データベースの検索式の構築を含む調査設計の手順を、実習に基づく研修を行っております。次回はいよいよ、本年7月に行った現地調査会社へのトレーニング風景と当社中国調査サービスを紹介させて頂きます。

(IP総研 水谷/呉)

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