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2015.02.26
[IPRの有効性]
AIA (American Invent Act)により当事者系再審査に代わってIPR (Inter Parte Review: 当事者系レビュー)が導入された。 IPRにおいては民事訴訟手続きに近い形のディスカバリー(開示手続)手続きが取られ、特許事件に特化した審判官(APJ: Administrative Patent Judge)がスピーディーに事件を審理している。 IPRが導入されてからの凡そ2年間に、特許庁への申請数は既に2000件を超えた。 これは1999年の導入以降長年使われてきた当事者系再審査の総数(1919件)を軽く凌ぐ勢いであり、如何に米国においてIPRが広く使われ(また期待され)ているかが分かる。
2014年秋に投稿された論文(Love, Brian and Ambwani, Shawn, Inter Partes Review: An Early Look at the Numbers (October 20, 2014). University of Chicago Law Review Dialogue, Vol. 81, p. 93, 2014)では、IPRの有効性に関する興味深いデータが示されている。
(1) IPR申請された84%において、少なくとも一つの請求項についてIPR手続きが開始(Institute)されている。
(2) IPR申請された74%において、全ての請求項についてIPR手続きが開始されている。
(3) 最終決定まで争われたケースの77%以上において、IPR手続きが開始された全てのクレームが無効化されている。
(4) NPE (Non Practicing Entity: 不実施主体)所有特許の方がnon-NPE所有の特許よりも高い割合でIPR手続きが開始されている(一方でnon-NPE所有の特許の方が、NPE所有特許よりも若干高い割合で最終的に無効化されている)。
(5) IPRと同時進行の係属中特許訴訟手続きの停止(stay)率は82%である。
特許の無効化を狙う当事者から見れば、最終的には高い無効化率が期待されるので有効な手続きといえる。 そして既に特許訴訟に巻き込まれている被疑侵害者の立場であれば、IPRを提出することで、少なくとも一時的に訴訟が停止されて莫大な訴訟費用の支払いが先延ばしされるというメリットもある。
[IPRの日本企業の利用状況]
さてNGB IP総研では、2014年12月2日までに米国特許庁に収録されていたIPR 2124件を対象に、日本企業・日系企業のIPRの利用状況等を分析した。 IPR上位提出企業はアップル(55件)、サムソン(53件)、グーグル(53件)、マイクロソフト(47件)、ジレット(33件)、インテル(32件)など訴訟事例ではお馴染みの顔ぶれだが、日本・日系企業もそれに続き、特にNPE対策としてIPRを利用し始めている状況が分かる。
(1) IPR提出総数2124件のうち、日本・日系企業のIPR提出数は189件と全体の8.9%を占める。
(2) IPRを提出した日本・日系企業数は43社。 上位提企業は東芝(19件)、トヨタ自動車(18件)、富士通セミコンダクター(17件)、アメリカンホンダ(12件)、任天堂アメリカ(9件)、キヤノン(8件)、ソニー(8件、ただしソニー関連企業合計では23件と最大)。