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2016.02.17
Lexmark事件が扱う問題の影響は広く、2015年10月に行われたCAFCのヒアリングでは、両当事者の他に政府(司法省)、コンピューター業界代表、バイオ業界代表が、それぞれの見解を述べていました。その注目判決ですが、Dyk判事の反対意見(ヒューズ判事参加)を含め全体で129頁に及ぶもので、筆者はまだ目を通しきれておりません。米国弁護士その他各分野からの専門家コメントが出てくるのもこれからになるでしょうから、取り急ぎ、判決文の冒頭関連部分のベタ訳を作成し、以下にご紹介することにしました。読みにくいところもありますが、あくまで速報ということでご容赦ください。
当裁判所は、「特許権の消尽」という法典化されていない法理に関する当裁判所の二つの判決(1992年と2001年の判決)が、その後下された連邦最高裁判決に照らしてもなお有効なものであるか否かを検討すべく、当裁判所全判事による審理を行うことを決定した。 そして本日、当裁判所は、当裁判所が下した先の2判決が示した原則の有効性を再確認した。
第一に、当裁判所は、Mallinckrodt, Inc. v. Mdeipart, Inc.事件(976 F.3d 700(Fed. Cir. 1992)) において当裁判所が下した判断を維持する。すなわち、一回限りの使用/再販禁止という条件付きで特許対象品を販売した特許権者は(この条件は適法なものであり、販売に際し購入者に伝えている)、かかる販売によって、購入者または川下の購入者に対し、再販/再使用の権限を与えたことにはならない(かかる権限付与については明示的に否定している)。かかる再販や再使用は、最初の販売時に知らされた適法な制限に反するものである限り、依然許可されていないのであり、特許法第271条に基づく侵害を構成する。連邦最高裁の先例によれば、特許権者は、特許対象品の製造と販売について他者にライセンス供与する際、かかる制限を通じて、第271条に基づく権利を保持することができる。Mallinckrodt判決において、当裁判所は、特許対象品自体の製造と販売をする特許権者に対しても、これと同じ権利を認めない法的根拠はない、と判示した。 当裁判所は、このMallinckrodt判決は、その後のQuanta Computer, Inc. v. LG Electronics, Inc.事件(553 U.S. 617(2008))における連邦最高裁判決後もなお有効であることを、ここにおいて確認する。Quanta事件は、特許権者自身による販売は扱わなかった(条件付き販売についても扱っていない)が、特許権者が供与したライセンスに基づく別の生産者による販売について扱う事例だった。
第2に、当裁判所は、Jazz Photo Corp. v. International Trade Comm’n事件(264 F.3d 1094 (Fed.Cir. 2001))において当裁判所が下した判断を維持する。すなわち、米国特許の保有者は、米国特許対象の製品を米国外で販売した、または販売の許可を与えたというだけの事実により、これを購入した者が当該製品を米国に輸入し、米国で販売または使用することを許可したものとはみなされない。かかる輸入、販売行為は、特許権者による許可を得ていない限り侵害行為となる。Jazz Photo判決では、外国主権によって支配される外国市場は、米国主権によって支配される米国市場(米国特許権者がここで販売をすれば、販売した製品について権利が消尽したものと推定される)と同質のものではない。(米国特許製品の)購入者が、外国での販売を侵害抗弁として依拠できる可能性は残っているが、それは、権利消尽とは別の抗弁である明示または黙示のライセンスの存在を立証することによってだ(この点は最高裁のQuanta判決が指摘している)。 当裁判所は、Jazz Photo判決において特許権の国際消尽を否定した当裁判所の判断が、Kirtsaeng v. John Wiley & Sons, Inc.事件(133 S.Ct. 1351(2013))における最高裁判決後もなお有効であることを、ここにおいて確認する。Kirtsaeng事件において最高裁は、特許法については扱っておらず(訳注:本件は著作権事件)、また外国での販売が、(許可がなければ)国内での侵害行為となるような行為をなす権限を購入者に与えたものとみなすことができるか否か、という争点についても扱っていない。(以下、略)
=> 大法廷判決原文はこちらで
(営業推進部 飯野)