- 知財情報
- アーカイブ
2016.03.23
https://www.unified-patent-court.org/sites/default/files/agreed_and_final_r370_subject_to_legal_scrubbing_to_secretariat.pdf
(〝Rules on Court fees and recoverable costs”, 2016年2月25日)
注目されていた「オプトアウトの申請料金」は、これまでの案では80ユーロでしたが、これが削除されています。 以下では、『オプトアウト』という手続きについて、そして、なぜ「オプトアウトの申請料金」が注目されていたのかについて、ご説明いたします。
現在、9ヶ国がUPC協定を批准しており、13ヶ国目の批准から4ヶ月後にUPC協定が発効となります。 UPC協定の発効により、UPCでの訴訟が可能となる他、UPC協定を批准した締約国に対して単一的な効力を有する欧州単一効特許(UP: Unitary Patent)が取得可能となります。 UPCは、欧州特許庁で付与されたUP、及び、UP以外の欧州特許(従来型欧州特許)に関する訴訟の専属管轄権を有します。 ただし、UPC協定発効から7年間の移行期間中は、従来型欧州特許については、従来通り、各国国内裁判所で訴訟を提起することもできます。 また、この移行期間中(厳密には移行期間満了の1ヶ月前まで)は、従来型欧州特許について、UPCの専属管轄の適用除外(権利期間満了まで有効)を申請することが可能です。
この従来型欧州特許に対するUPCの専属管轄の適用除外が、『オプトアウト』と呼ばれるものです。
オプトアウトを行うには、特許権者が、UPCに対して申請します。 UPCは、UPC協定発効前に、オプトアウトの事前申請を受け付ける予定で、2016年の後半には事前申請が可能となる見込みです。 これは、UPC協定発効直後にUPCで特許無効訴訟を起こされるリスクを回避できるようにするためです。
オプトアウトの申請料金は、特許1件ごとに係る料金として議論されてきたため、特に特許保有件数が多い企業にとっては、オプトアウトの申請に係る費用的な障壁が懸念されていました。 今回、その申請料金が無料となったことにより、オプトアウトの申請に係る障壁が緩和されたことになります。
なお、UPCは、現在、訴訟管理システムの準備を進めており、オプトアウトの処理もこの訴訟管理システムで行われる予定です。 UPCの準備委員会は、今回のオプトアウト無料化の理由について、「オプトアウトの事務的な負荷は、そのほとんどを申請者(特許権者)が負うことになる」「オプトアウト料金の処理がなければ、オプトアウトの処理に伴う裁判所側の追加コストは発生しない」と説明しています。
弊社では、引き続きUPC/UPに関する情報収集を行い、UPC協定発効前のオプトアウト対応についてもタイムリーにご案内できるよう、準備を進めて参ります。
(記事担当:特許第1部 高橋)