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2016.03.23

【特許・意匠ニュース】 インド「コンピュータ関連発明の審査ガイドライン」を運用開始!

 2015年12月14日付で運用が停止されていた(*1)インドにおけるコンピュータ関連発明の審査ガイドライン (Guidelines for Examination of Computer Related Inventions) が、利害関係者や専門家との調整を経て、2016年2月19日付で改訂版が発行され運用が開始された(*2)。

 改訂版においては、コンピュータ関連発明の特許性の決定要因として、以下の3つのステップのテストが挙げられている(「5. Tests/Indicators to determine Patentability of CRIs」):
(1) クレームを正しく解釈し、実際の貢献を識別する。
(2) 貢献が数学的方法,ビジネス方法またはアルゴリズムのみにある場合、クレームを拒絶する。
(3) 貢献がコンピュータプログラム分野にある場合、新規なハードウェアと組み合わされてクレームされているか否かを確認し、発明に係る特許性を決定するための他のステップに進む。コンピュータプログラム自体には特許性は絶対に認められない。貢献がコンピュータプログラムのみにある場合、クレームを拒絶する。貢献がコンピュータプログラムおよびハードウェアにある場合、他の特許性を審査するステップに進む。

 改訂版では、「たとえ対象がハードウェア/ソフトウェアの関係に関する場合(例: クレームが “processor is programmed to …” または “apparatus comprising a processor and configured / programmed to …”)であっても、その内容は『方法』としての機能の表現が判断されるべきである。特許性判断においては、クレームされた特定の形式ではなく、発明の基本的な内容が重視されなければならない。特許法はコンピュータプログラムそれ自体を明確に除外しており、クレームの実体を単に言葉でカモフラージュして除外を回避するようなことは認められない(例:異なるサブルーチンが異なる物理的位置(プロセッサ等)で実行されるというものは十分ではない)」とされている(「4.4.4 Form and substance」)。

 また、改訂版では、ミーンズプラスファンクション形式のクレームに関し、独立した項目が新設された(「4.4.5 Means plus function」)。ここでは、「コンピュータ関連発明に係るクレームはしばしば、“デジタル信号をアナログ信号に変換する手段”のような、何らかの機能を実行する手段として記載される。(中略)手段の構造的特徴が明細書に開示されていない場合、ミーンズプラスファンクション形式のクレームは認められない。さらに、発明がコンピュータプログラムによってのみ適用されることが明細書でサポートされる場合、これらの手段はコンピュータプログラムそれ自体に他ならないので、拒絶する」と記載されている。

 なお、「コンピュータプログラムそれ自体を対象とするクレーム」に関しては、当初版と同じく、「(i)computer programmes / set of instructions / Routines and/or Sub-routines を対象とするクレーム」や「(ii)“computer programme products” / “Storage Medium having instructions” / “Database” / “Computer Memory with instruction” i.e. computer programmes per se stored in a computer readable medium を対象とするクレーム」は、コンピュータプログラムそれ自体を対象とするクレームであり特許性から除外されると記載されている(「4.5.4 Claims directed as “Computer Programme per se”」)。

 他方で、当初版では、「決定要因」において、「特許を受けることのできるものと見なされるためには、対象は、以下のいずれかを含まなければならない」として、「新規ハードウェア」,「新規コンピュータプログラムを備えた新規ハードウェア」,「公知のハードウェアを備えた新規コンピュータプログラムであって、当該ハードウェアと通常以上に相互作用し、かつ、既存のハードウェアの機能性及び性能の変化に影響を及ぼすもの」が挙げられおり、加えて、「コンピュータプログラムであって、コンピュータ上で作動させた場合又はコンピュータにロードされた場合に、ソフトウェアと、それを作動させているハードウェアとの間で「通常」以上に物理的に相互作用し、かつ、更なる技術的効果をもたらすことが可能なものは、除外対象とは見なされないことがある」と記載されていたが、これらは改訂版では削除され、前記の「3つのステップのテスト」に書き換えられている。
 また、当初版にあった「6. 技術的進歩を判断する指標」や、「8. 特許を受けることのできるクレームの事例の説明」も、改訂版では削除されている。

 このように、今回のコンピュータ関連発明審査ガイドライン改訂版では、当初版のうち特許を受けることのできる指標や事例に係る記述が消えた一方で、コンピュータプログラムそれ自体を対象とする発明には、クレームの書き方(一例として「プロセッサとメモリとを備え所定の動作を行う装置」)に依らず特許を認めないことが明確に打ち出された内容となっている。まだ運用が開始したばかりだが、今後の運用に注目が集まる。

*1:Office Order No. 70 of 2015 (CRI審査ガイドラインの運用停止に係る庁命令)
http://ipindia.nic.in/officeCircular/officeOrder_14December2015.pdf

*2:Office Order No. 11 of 2016 (CRI審査ガイドラインの改訂版発行および運用開始に係る庁命令)
http://www.ipindia.nic.in/iponew/OfficeOrder_CRI_19February2016.pdf

(記事担当:特許第1部 鮫島)

<参考文献>
インド特許庁 「コンピュータ関連発明審査ガイドライン (Guidelines for Examination of Computer Related Inventions) 改訂版」
http://www.ipindia.nic.in/iponew/GuidelinesExamination_CRI_19February2016.pdf

JETROニューデリー事務所知的財産権部 「コンピュータ関連発明(CRI)ガイドラインの運用停止」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/in/ip/pdf/news_20151221.pdf

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