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2016.07.20
そこで今回は、現在の自動車業界の大きなトレンドである「自動運転」に着目し、欧州の自動車メーカー及びサプライヤーを対象として特許の出願動向を俯瞰したい。
本調査に際して、欧州自動車メーカーとして以下11社を選定した。
BMW,フォルクスワーゲン,アウディ,ダイムラー,ボルボ,PSA(プジョー、シトロエン),ルノー,フィアット,ポルシェ,マン,スカニア
欧州自動車サプライヤーとして以下17社を選定した。
ボッシュ,コンチネンタル,ZF,TRWオートモーティブ,ミシュラン,ヴァレオ,ビーエーエスエフ,シェフラー,ティッセンクルップ,ジョンソンマッセイ,ベーア,マーレ,フォーレシア,オートリブ,GKN,ゲトラグ,ピレリ
本稿において「自動運転」とは、「完全」な自動運転だけでなく、一部自動運転を含めた広い概念を想定している。「一部自動運転」には、オートクルーズ、レーンキープ、自動駐車、衝突回避システム、隊列走行、自動ブレーキ、運転支援などを含む。
本調査では、特許データベースを使用して、上述したメーカー及びサプライヤーの企業に限定し、自動運転に関連する母集合を作成した。公報の内容についての読み込みは行なわずに、データベースにより出力された母集合をマクロ的に分析したため、ノイズが含まれている点に予めご留意されたい。
図1は、出願日を基準として2010年以降における、上位各社の特許ファミリ件数である。
以下、一部企業の近年の動きに目を向けてみる。
(1) ボッシュは、同社プレスリリースによれば、2011年から自動運転開発に取り組んでおり、2013年にはドイツの高速道路でテスト車両による公道試験を実施しているとのことであり、早期から自動運転の開発を進めると共に、特許出願を行っていたと推測される。
(2)ダイムラーは、昨年、ドイツの公道を走行する自動運転トラックを公開した。
(3)BMWは、2021年の自動運転車の市販化を目標に掲げ、本年7月には、半導体メーカーのインテル、画像解析ソフトウェアに強みのあるMobileyeと提携し、自動運転車開発の技術提携を発表した。
(4)コンチネンタルは、自動運転の「目」である、レーダーやカメラによる撮像技術に強みを有している。これらの技術は、日本国内の自動車メーカーの衝突回避システムや自動ブレーキに採用された。
次に、上位11社について、主要国への出願件数推移を図2に示す。(「優先年」は最も早い出願年)
図2を見ると、各企業ともに自国への出願件数が多い。その一方で、日本への出願件数と比較して米国や中国への出願件数が多い傾向が見受けられる。このことから、欧州メーカー及びサプライヤーは、自動運転車市場として米国、中国を重要視していると推測される。
自動運転における要素技術として、センサー技術、撮像技術、画像処理技術が例示できる。これらの要素技術について、異業種の企業間で足りない技術を補完し合うために、国際レベルで技術提携や合併・買収が進むといわれている。今回は「自動運転」という広い技術テーマについてマクロ的に俯瞰したが、今後は自動運転の要素技術の特許出願の動向にも注目していきたい。
(IP総研 水谷太朗)