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2016.12.21

【中国視察2016】 [5] 深圳海関(深セン税関)

NGBは、日本企業様10社のご参加を得て、9月18日 (日) – 23日 (金) の日程にて中国視察ツアーを催行した。 本稿では、視察先の一つである深圳海関(深セン税関)の訪問記録をご紹介する。

経済特区として急速な経済成長を遂げ、最近は「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる深セン。世界最大の電脳都市のひとつであり、デジタルガジェットや家電製品の製造・流通量も恐らくは世界一・・・当然ながらその中には数多くの模倣品が紛れ込んでいるだろう。NGB視察ツアーは今回初めて北京を出てその深センに飛び、模倣品差止めの実情を確かめるべく、税関当局を訪問した。当日は法規処副処長の沈紅宇氏をはじめ3名の方にご対応頂き、税関登録と差止めの詳細について説明を受け、日本企業ご参加者との情報交換を行った。

■深セン税関について
まずは深セン税関の組織についての説明から・・・都市の規模ならびに各種商品の流通量を反映して、深セン税関は職員数5400名と中国国内で最大の規模を誇る。21ヶ所の支局を持ち、そのほか18ヶ所の機関で差止めを行い、海運/陸運/郵便物、そしてe-コマースと幅広い案件をカバーしている。沈副処長は「海関総署(中央税関)の許可を得ている」との前置きつきで、差止めに関する数値データを読み上げる。それによると、2011年から2015年までの差止め件数が1.7万件、商品数が1.2億個、その商品総額は4.2億人民元。これらの数値は中国最大であり、知財関連でも中央からしばしば評価されているとのことであった。
■税関登録と差止めについて
中国国内の税関で(被疑)侵害品を差止めるためには、北京の税関総署に権利の事前登録を行うことが好ましい。税関総署のウェブサイト上には「プラットフォーム」が置かれ、登録申請は簡単に出来る模様。申請書を提出後、審査を経て、税関総署の運営する知識産権情報システムにデータが入力されると全国の税関で情報が共有される。どの税関からでも、例えば商標をキーワード検索することで、企業の登録状況を確認することが出来る。税関職員は日頃自主的に調査を行い、模倣品が発見されると登録の有無を確認して、権利者に通知をする。この流れが税関における差止め案件の90%以上を占めている。残る数%は、権利者が市場を調査して侵害品を見つけ、税関に差止め申請を出す方法。このケースでは、税関総署に権利の登録がなされていない場合でも、差止め申請の受付はしてもらえる。ただし審査が厳しくなるため、先に総署に登録をしてから差止め申請をされた方がスピーデイに進むのでお勧めです、とのアドバイスを頂いた。

■税関の管轄(行使出来る権利の種別)
税関の管轄は、税関法と税関知識産権保護条例という中央の法律と行政規則とによって、知的財産権の範囲と決められている。即ち差止めの対象は著作権までで、不正競争防止法は考慮されず、パッケージデザインや(商標権未登録の)ブランドを根拠に差止めは出来ない。特許侵害に基づく差止めも管轄の範囲ではあるものの、特許権では真贋の見極めが難しく、税関が調査をして見つけるよりも権利者が差止めを申請するケースが多い。また、特許の場合は、権利者は通知を受けてから20日以内に民事訴訟を提起する必要があり、期限内に提訴が無ければ商品は再びリリースされてしまう。税関には両者が意見交換する場を導入していないので、差止め可否の判断が出来なければ司法に移送される。ここでいう特許権には実案・意匠も含まれる。

■日本企業の対応現況
中国税関登録手続きをしている日本企業は僅かに220社、権利の数は1200件程とのことで、沈副処長からは「日本企業は中国で多くの権利を取られていながら、その割には税関のご利用が少ないように感じます」とのご指摘を頂く。「登録にかかるオフィシャルフィーは無料ですので、是非ともご利用下さい。有効期間は10年、以降の更新も無料です」と、更なる積極的活用について“営業”されつつ、視察団一同は深セン税関を後にした。

この度の深セン税関、そして次なる香港税関への訪問アポイントならびに通訳はBird & Bird LLP 北京オフィスパートナーの道下理恵子弁護士にご尽力を頂いた。この場を借りて、お礼を申し上げたい。

(営業推進部 柏原)

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