- 知財情報
- アーカイブ
2017.05.01
中国弁護士・中国弁理士・日本国弁理士
張 華威
2017年4月27日、中国最高人民法院は「中国法院知的財産司法保護状況(2016)」(以下、「報告書」という)をその公式HPに発表した。
報告書によれば、2016年の全国人民法院の各種知的財産関連事件(第一審、第二審、再審を含む)の新受件数は177,705件(対前年比19.07%増)に達し、既済件数は171,708件(対前年比20.86%増)に達した。以下、民事事件、行政事件、刑事事件のそれぞれについて、報告書の概要を紹介する。
1.民事事件
上記各種知的財産関連事件のうち、地方各級人民法院の民事第一審事件の増加が最も著しく、新受件数と既済件数はそれぞれ136,534件(対前年比24.82%増)と131,813件(対前年比30.09%増)を記録した。新受件数の内訳は以下のとおりである。
*専利(特許権、実用新案権、意匠権を含む)は12,357件(対前年比6.46%増)
*商標は27,185件(対前年比12.48%増)
*著作権は86,989件(対前年比30.44%増)
*技術契約は2,401件(対前年比62.23%増)
*競争関連民事事件は2,286件(対前年比4.81%増)、そのうち独禁法関連事件は156件。
*その他知的財産民事紛争事件5,316件(対前年比71.87%増)
2016年の渉外知的財産民事第一審事件の既済件数は1,667件(対前年比25.62%増)であり、香港・マカオ・台湾関連事件の既済件数は1,130件(対前年比291.99%増)であり、外国や特別行政区関連の事件が大幅に増加している。
地方各級人民法院の民事第二審の新受件数と既済件数もそれぞれ20,793件(対前年比37.57%増)と20,334件(対前年比35.33%増)を記録し、大幅に上昇している。そのうち、第二審における第一審判決の自判・差戻率は5.94%であり、昨年とほぼ同一の割合を維持している。
一方、再審の新受件数と既済件数はそれぞれ79件(対前年比31.3%減)と85件(対前年比25.44%減)であり、再審率も対前年比45%減となっており、判決の安定性及び正確性が向上していることが分かる。
また、第一審事件の和解・取下率は64.21%であり、第二審事件の和解・取下率は24.44%であり、和解による解決が例年と比べて大幅に上昇した。
損害賠償についても上昇の傾向があり、弁護士費用などの合理的費用を賠償額から独立して計算するようになり、人民法院の保全命令に従わなかった当事者に対して過料を科すなどの懲罰的措置も施す事例もあった。
2006年から2016年にかけて全国法院における専利権民事第一審新受件数の推移を以下のグラフのとおりとなる。
=>後編に続く