テヘラン到着から一夜明け、長年NGBのイラン商標案件を担当している事務所へ訪問。経済制裁が原因で、日本からイランへの送金は困難です。そのため、最近は周辺国の事務所経由での依頼とせざるを得ません。同事務所は、中東のハブ事務所のイランローカルとして活動しています。担当の弁護士は、商標の仕事が天職だと自ら言う、50台前半の女性のElma Khachadourian先生です。イランでの商標出願は手続前に指定商品の確認作業が必要とされますが、どの件も迅速、正確、かつ丁寧に案内してくれる実力派です。とても気さくな方で、こちらからの少々意地悪な質問に対しても、本音で答えて頂きました。日本からの訪問客は初めてとのことで、恐縮するほどの歓待です。
事務所でしばらくイランの法制度や、商標の実務に関する情報を収集後、アインシュタインのそっくりさん!(ティビ氏)に特許庁を案内して頂きました。特許庁は、テヘランのオフィス街に位置し、新館、旧館があります。新館は近代的で、とても立派な建物です。中に入りますと、銀行のような窓口が設けられていて、みんな書類を持って並んでいる様子が見られます。イランの商標出願は電子化が進んでいますが、委任状の原本は特許庁に提出する必要があります。そのため、特許庁に毎日通うのが、我々のアインシュタイン、ではなくティビさんの仕事です。
新館訪問の後、審査部が集中する旧館に向かいます。旧館は、かなり年代物の建物で、商標、意匠、特許の全ての審査業務がその中で行われています。まず先に訪問するのは、当然ながら商標の審査部門です。ティビさんの紹介で、商標部マネジャーのAlireza Zaeni氏と面会することが出来、商標審査部の内部を拝見させていただきました。
審査官の机は、お洒落なモダンファニチャー。机上はとてもすっきりしています。意外と紙が少ない印象で、電子化が進んでいることが伺えます。何よりも、みんな明るく仕事をしているのが印象的でした。また、宗教上の理由で、男女の審査官は別々の部屋で審査を行っています。イランでは、女性も非常に活躍しています。噂に過ぎませんが、審査の質は女性審査官のほうが高いとか?例えば、マドプロ案件の審査担当は、女性の審査官が担当しています。過去には日本特許庁でも研修を受けたそうです。
特許審査部、意匠審査部、次々と訪問しては、直接審査風景を見せて頂きました。すると、あっという間に昼食の時間。審査官のみなさんは、お昼休みを大事なコミュニケーションの時間と考えており、三々五々ランチに向かうと、審査室はすっかり静かになりました。ちなみに我々のティビさんは、40年近く毎日特許庁に通っているため、特許庁で誰も知らない者はいない、かつ尊敬されている方です。当局との地道なコネクション作りを続けるティビさん、いざとなる時には、頼りになる人物ですね。
(商標部 関口/範)
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