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2017.07.20
また、最新の情報については本ページ下部にある<今月のアップデート>内にまとめましたので、ご覧ください。
<オプトアウトとは?>
前回の記事でも触れましたが、統一特許裁判所が開始すると、欧州特許庁で付与された欧州特許(以下、EP特許)に関する新たな事件は、原則すべて、統一特許裁判所の専属管轄となります。
統一特許裁判所の専属管轄となるEP特許は、(1)欧州単一効特許、及び(2)従来型欧州特許の両方です。従来型欧州特許も統一特許裁判所の専属管轄となる、という点は大きなポイントです。すなわち、新制度開始よりも前に付与された従来型欧州特許も、原則として統一特許裁判所の専属管轄となります。
ただし、従来型欧州特許については、例外として、新制度開始から7年(+最大7年延長される可能性あり)の過渡期の間は、統一特許裁判所と国内裁判所のうちのいずれかを選択可能です。また、自身の保有する従来型欧州特許を統一特許裁判所の管轄から除外することも可能です。
この従来型欧州特許の統一特許裁判所管轄からの自発的除外手続きが『オプトアウト』です。
<オプトアウト可能な欧州特許は?>
統一特許裁判所での訴訟が提起されたことがない従来型欧州特許、及び、欧州特許庁で係属中の公開済み欧州特許出願に対して、オプトアウトが可能です。
なお、係属中の欧州特許出願に対してオプトアウトを申請した後に、欧州単一効特許を登録した場合、オプトアウトは取下擬制となります(∵欧州単一効特許は、例外なく、統一特許裁判所の管轄となるため)。
<オプトアウトの申請時期は?>
オプトアウトは、新制度開始前の3ヵ月間の準備期間である「サンライズ期間」の開始日から、前述の過渡期(新制度開始から7年(+最大7年延長される可能性あり))の満了1ヶ月前まで、申請可能です。 なお、サンライズ期間に申請が受理されたオプトアウトは、新制度開始日に登録されたものと見なされます。
<オプトアウトの申請方法は?>
UPC Case Management Systemを介して、オンラインでオプトアウト申請します。 なお、現在、UPC Case Management Systemのβ版が公開されています(*1)。
<オプトアウトの申請者は?>
誰でもオプトアウトの申請が可能です。ただし、統一特許裁判所での訴訟代理資格を有する弁護士・欧州特許弁理士以外が申請をする場合、委任状が必要になります。
<オプトアウトの申請費用は?>
統一特許裁判所へ納付する費用は無料です(*2)。
上記の通り、オプトアウトを申請するための環境は着々と整いつつあります。
オプトアウト申請のメリット・デメリットや、オプトアウト申請の際の留意点については、次回の記事でお話する予定です。
<今月のアップデート>
・2017年6月26日付で、イギリス議会におけるUPC関連法案の採択プロセスの再開が発表され、7月7日付で、 “Protocol to the Agreement on a Unified Patent Court on Provisional Application”(UPC協定の暫定適用に関する議定書)の発効に必要な手続きがイギリスで完了しました。これにより、また一歩、UPC協定の発効に近づいたことになります。
・2017年6月27日付で、UPC委員会のRamsay委員長からのメッセージが発表されました。2018年前半のサンライズ期間の開始を示唆しております。詳細なタイムテーブルについては追って発表される予定です。
先月と打って変わって、今月入ってきた2つのニュースは新制度の開始に向けてポジティブなものでした。また、筆者は欧州の特許弁理士と話をする機会が何度かありましたが、何かと新制度に関する話になり、現地でも盛り上がってきている様子が伺えました。
次回は、「オプトアウト:応用編」について、お話しする予定です。乞うご期待!
(記事担当:特許第1部 田中)
*1:https://secure.unified-patent-court.org/login
UPC Case Management Systemのβ版のログイン画面
*2:https://www.ngb.co.jp/ip_articles/detail/1283.html
【特許・意匠ニュース】欧州統一特許裁判所の料金が決定!