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2017.09.13

米国デザイン特許のIPRの状況

米国特許改正法(AIA=American Invent Act)により特許無効手続きとしてIPR (Inter Parte Review: 当事者系レビュー)、PGR (Post Grant Review: 登録後レビュー)、CBM(Covered Business Method:ビジネス方法特許レビュー)が導入された。IPR ,PGR,CBMはともに2012年9月16日に施行されている。このうち、IPRは、日本特許制度でいうところの無効審判制度に相当するものである。
米国においては、日本でいう「意匠」は特許法でデザイン特許(Design Patent)として規定されている。では、デザイン特許では、どの程度、IPRが活用されているのだろうか。本稿では、米国デザイン特許のIPRの状況を報告したい。
なお、米国デザイン特許に関するPRGについては、2012年から現在までで数件(2017年9月現在で確認できたものは5件)と件数が少ないため、本稿では取り上げないものとする。また、CBMについても今回は特に対象としないものとする。
1.IPR申請件数
米国特許庁の開示している情報によれば、IPR申請件数は、2015年が1737件、2016年が1565件、2017年は2017年4月28日時点で996件となっている。このうち、米国デザイン特許のIPRは37件であった(図1参照)。2016年は、Nike, Incの靴に関するデザイン特許に対するIPR申請8件、Gamon Plus, Inc.の商品用陳列具のデザイン特許に対する4件などが集中したため件数が多くなっている。全体として、デザイン特許IPRの件数は若干増えていると考えてよいであろう。
今回調査では、日本国籍の申請人によるIPR申請は該当がなかった。また、日本国籍の出願人の米国意匠に関するIPRも該当がなかった。

2.物品別傾向
これら37件の米国デザイン特許のIPRについて、物品別にみてみると、物品「靴」が15件と多い。これら15件は、いずれもSkechers U.S.A., Inc.がNike, Inc.の登録意匠に対して申請したものである(図3参照)。

3.部分意匠
これら37件の米国デザイン特許のIPRについて、31件は部分意匠に関するものであることが確認できた。

4.訴訟
前述した37件のIPRの対象特許のうち、USD631670については、訴訟が提起されている記録が見つかった。(2015月1月27日付起訴、同年12月14日終結。KNAUF INSULATION, LLC et al v. JOHNS MANVILLE CORPORATION, et al. S.D.Ind. 1:15-cv-00111-WTL-MJD)

5. 手続きの傾向
米国デザイン特許の申請後、Trial手続開始の決定がされたものは約43%(37件中16件)であった。それ以外は、Trial手続開始の決定がされなかったものが約51%(37件中19件)、他は手続き上の取り下げがされている。
Trial手続開始後、最終決定が下された8件のうち、クレーム維持されたものは2件、全クレーム無効となったものは6件であった。

まとめ
米国デザイン特許のIPRの申請数は少ないが、一定の傾向を見ることができた。
今後、米国デザイン特許の出願数およびIPR申請数がどのように変動していくのか注目したい。

(参考文献)
1.
FISH&RICHARDSON ”Post-Grant for Practitioners Inter Partes Review (IPR) of Design Patents”
http://fishpostgrant.com/wp-content/uploads/PG-Design-Patent-Webinar-Final-Draft-9-14-16-FINAL-CLE-REMOVED.pdf
2. https://www.uspto.gov/patents-application-process/appealing-patent-decisions/trials/inter-partes-review

(IP総研 水谷)

図1 米国デザイン特許IPR申請件数
図2 米国デザイン特許IPR物品別申請件数
図3 Nike, Inc.の登録意匠の一例
図4 IPR手続きの傾向

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