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2018.03.20

【Cases & Trends】 [続報] 特許の実施報告義務をめぐるインド公益訴訟 - 報告書式(Form-27)の見直しへ

「特許発明の実施報告義務を特許権者に遵守させていない、義務違反者に対し法に基づく制裁も課していない」などを主張して、2015年にインド特許庁を訴えたインド法学者による公益訴訟の最新動向続報です。

デリー高等法院(Delhi High Court) W.P.(C)5590/2015
Shamnad Basheer (Petitioner) vs. Union of India & Ors (Respondent)

関連法規
特許法第83条(特許発明の実施に関する一般規定)
「特許とは、特許権者が特許対象物の輸入を独占することを可能にすることだけのために認められたのではない…。
特許発明の恩恵を公衆に手の届く価格で利用しうることを可能にするために認められた」と明記。
特許法第146条
2003年特許規則131条に基づく特定フォーム(Form-27)で特許発明の実施に関する情報の提出を特許権
者に要求する権限を特許庁長官に付与
特許法第122条
規則131条違反に対する罰則(罰金または禁固刑)を規定

前回は2018年1月10日付の命令(「1/10命令」)を中心に紹介しましたが、今回は同命令後に行われたヒアリングに基づいて下された2月7日付命令を中心に紹介します。 2/7命令に先立って行われたヒアリングには、1/10命令の中で名指しされたエリクソンやNATCO(バイエル特許の強制実施権者)が参加しており、彼らの主張も 2/7命令に反映されているようです。

2/7/2018 命令

[特許法第146条順守を困難にしている主原因は、Form-27中の文言にあり]
1970年に導入され、2003年に修正されたが依然、曖昧さを残すものとなっている。
特許庁は、本命令の日から2週間以内(2/21)に、Form-27修正を実施するための計画を提出すること。

[ライセンス情報の秘密性に関する明確化]
1/10命令 Par.10における 「Form-27を提出する特許権者は、ライセンスとサブライセンスの詳細を提出することが求められており、この情報を『機密』扱いにすることはできない」の意味について、明確にする。
開示すべき「詳細」とは、ライセンス/サブライセンスの「対象特許番号、契約日、ライセンシー/サブライセンシーの名」であり、ライセンスの契約条件・内容ではない。これは特許法第67条で期待する特許登録簿の記載事項にも一致する。

筆者注:この部分は、2/7のヒアリングに参加したエリクソンによる主張が反映されたようです。

[NATCOによる報告義務違反に関する1/10命令記載について]
裁判所はNATCOによる義務違反を認定したわけではない。1/10命令の記載は、申立人による主張を記しただけであり、裁判所の判断を記したものではない。

筆者注:NATCOは「義務違反をしてはいない」、と1/10命令の文言を非難しました。本稿でも1/10命令を紹介した際に、「このOrderは、申立人の主張、裁判所の事実認定や判断、訴訟参加人の主張などが入り混じっており、筆者としても正しい紹介ができているのか不安…」と書きましたが、「やはり」という感じです。

今後の展開

デリー高等法院のホームページを見ると(上記命令原文も入手できます)、本件はpendingであり、次回ヒアリング期日は3/15とされていま。
(法院HP検索サイト:http://delhihighcourt.nic.in/case.asp *冒頭の事件番号を入れて検索してください)

しかし、本件の大勢は、「実施報告義務は今後も順守が求められてゆくが、報告ツールとしての Form-27をより使い勝手のよい(順守しやすい)形に変えてゆく」ということになるのだろうと思います。実際、本命令後インド特許庁がどのようなForm-27修正計画を提出したのかは確認できませんが、インド特許庁HP上では以下の動きが見られました。

インド特許庁による規則改正ミーティングおよびパブリックコメント募集の告示

3/1/2018 インド特許庁、Form-27を含む実施報告関連法規の見直しに関する「ステークホルダーズ・ミーティング」の開催とパブリックコメント募集について告示。

コメント提出期限: 3/16/2018
ミーティング開催: 3/21/2018

(営業推進部 飯野)

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