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2018.05.18

【特許・意匠ニュース】米国IPR、最高裁による合憲判決、そしてUSPTOでの新たな動き

2018年4月24日、米最高裁は、米国特許商標庁(USPTO)のPTAB(特許審判部)によるIPRの違憲性が争点となっていたOil States v. Greene’s Energy, No. 16-712において、IPRの合憲性を認め、IPRは引き続き訴訟に代わる特許無効化手続きとして存続することとなった。本件で争われたのは、特許権という(個人の)財産権を、三権分立の下、行政機関であるUSPTOが、司法機関に代わって、無効にする(奪う)ことができるか、という点。米国憲法では(個人の)財産権は司法機関による陪審裁判によって決定される。最高裁は、特許権を“public franchise”(官庁が特定の会社等に与える公的な特権)であるとし、実質的に、特許権は(個人の)財産権ではなく、従って、その権利を与えた行政機関である特許庁が、自己の審査を再検討し、必要ならその訂正をすることができる(その結果、一旦付与された特許権が消滅することもあり得る)、とした。

また同日に、米最高裁は、SAS Institute v. Iancu, No. 16-969において、PTABはIPR申請対象クレームのすべてについて最終決定を下すべきと判断し、IPR申請対象クレームの一部のみに対するPTABの最終決定を容認した控訴裁判所(CAFC)の判決を覆した。無効の可能性の低いクレーム(無効の主張が弱いクレーム)も一旦申請が認められて最終決定まで進むと、何らかの判断が下されるため、どのクレームについてIPRを申請するかには慎重な考慮が必要になると思われる。

その2週間後、2018年5月8日に、USPTOは、PTAB手続きにおけるクレーム解釈を、審査段階と同じBRI基準(最も広義で合理的な解釈)ではなく、連邦裁判所やITCと同じPhillps基準(当業者にとって理解される通常の意味と特許の審査履歴を考慮した解釈)に揃えるとする規則改正案を発表した。規則改正案は、翌日5月9日に公示され、パブリックコメントは2018年7月9日までとされている。地裁で並行して訴訟が係属している場合には、その訴訟に対してPTABの決定の持つ影響力が高まり(クレーム解釈については既に法的決着がついていると考慮される可能性が高まる)、PTAB、地裁、ITCが同じ基準を用いることで、司法手続きの効率化、訴訟経済の負担軽減に資すると思われる。

(記事担当:特許第1部 髙橋、特許第2部 梅室)

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