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2018.10.12

【中国視察2018】 [2] 北京知識産権法院 (知的財産裁判所)

NGBはクライアント企業7社(8名)のご参加を得て、9月3日 (月) – 7日 (金) の日程で中国視察ツアーを催行した。 本稿では北京知識産権法院関係者との交流の模様を抜粋してご報告する。
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4回目となる北京知識産権法院との交流であるが、今回は、法院開設以来4年近く院長(裁判所長)を務められた宿遅先生、2015年2016年にも当視察団にご対応頂いた張暁霞庭長、そしてモデレーターとしてご同席頂いた中国人民大学法学院の張広良先生、の3名にご対応頂いた。特に元院長の宿遅先生とは初めてお目にかかる機会を得、設立以来のご苦労や成果、新たな取組みなどを直接ご本人から伺うことが出来、過去3回の交流の集大成ともいえる面談となった。
[宿遅(元)院長のお話抜粋]
まず、日本企業の皆様と一緒に、張広良先生の指導の下、このような交流会をもてて非常に光栄でございます。

2014年8月に中国全人代常務委員会において、北京、上海、広州の3箇所に知財法院を設けることを決定し、2014年11月6日に北京で、それから12月に上海と広州で知財法院が設立されました。この知財法院が設立してから3年後に、最高人民法院のシュウ委員長より、知財法院の設立の状況について報告することになっていました。そして全人代の方に最高人民法院より報告をしたのですけれども、この3年間で非常に大きな成果があったことが判明いたしました。

まず、その具体的な成果としましては、1つ目は、このような専門的な裁判所を設けることにより、中国の知財の司法的な保護のレベルが非常に著しく向上したのではないかと思います。そして、このような知財法院を設立したことにより、全国にある他の地方の人民法院に対して1つのお手本になったのではないかと思います。

成果の2つ目としては、この3つの知財法院の指導の下、司法改革というものを推進して参りました。例えば、独立した裁判であったりとか、あるいは専門家、専門的な裁判、それから公衆に対する情報の透明化ですね、それから所長裁判長、法廷長自ら事件を担当するなど新しい取り組みが行われました。また、北京の知財法院では、全国の判例の研究、判例研究指導基地というところを設立して、判例のこれからの役割というものが顕在化してきたのではないかと思います。

3つ目の成果としては、主に国際条約の順守を行ってまいりました。これにより、各当事者を平等に保護できるようになりました。この3年間は短かったですけども、非常にこれらの大きな成果を得られたのではないかと思います。

ただ、この3年間の試みの中でも一応問題点もいくつかございます。1つは、案件、事件の数があまりにも多過ぎるということですね。裁判官の数がついていけないという状況が発生しています。

設立当時の裁判官の数は27名だったのですけど、現在に至り50名くらいまで増えております。2015年の新受理案件は9111件、2016年は10650件、2017年は15600件と、年々増えております。中国は大陸法の国でございますので、英米法と違ってすべての案件を裁判官が処理しなければいけませんので、非常に現在裁判官が疲労しております。裁判官1人につき300~400件の案件を抱えているような状況ですので、新しい案件を割り当てたとしても着手するのが3年後とか4年後になってしまいます。結構、私も色々噂を聞いておりまして、外国の当事者がもともと北京で提訴したかったけど北京の裁判官は忙しすぎて、提訴しても着手するのが3年後4年後になってしまうので、上海または広州の裁判所を選ぶというような状況が発生していると聞いています。

この問題を解決するために裁判官を増やすということが考えられるのですが、そんなに簡単ではないのですね。一人の一人前の裁判官を育てるには非常に長期的な時間が必要になってきます。あとは、裁判官を増やすためのもう一つの考え方として、他の分野の例えば民事法、商法の関係の裁判所から裁判官を取り入れる、あるいは弁護士や学者の方々から取り入れるという考えもありますが、あまりにもプレッシャーが大き過ぎて、誰も裁判官になろうと思わない状況でございます。

このような問題を解決するために裁判所内でも色々な取り組みを行っております。

宿遅先生が挙げられた「色々な取り組み」は、促進チームの結成による審理の効率化、審理のコア部分以外の周辺手続きの外注化、弁護士に出来ることは弁護士に任せるという分業化、インターネットを使った送達手続き、更にはWeChat(中国版LINE)のプラットフォーム上での調解手続きなど、実に様々。その後もお三方からは、合計2時間超の長時間にわたって熱いお話をお聞かせ頂き、日本側からの数々のご質問にもご丁寧にお答え頂いたが、紙面の関係で本稿では割愛させて頂く。この場を借りて、各氏に改めて御礼申し上げたい。

(特許第2部 北村 / 営業推進部 柏原)

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