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2018.10.22
それから約2年、ディスラプティブ(破壊的)な新技術はさらに猛威を振るっているのか。フィンテック特許ランドスケープはどのような状況になっているのか…。2018年に入り、大手金融機関やその他プレーヤーの動向を示す記事やレポートが目に触れるようになりましたので、いくつかを拾って紹介したいと思います。
大手銀行が相次いで「リスク要因」に掲げる「ブロックチェーン」、「暗号(仮想)通貨」
2018年に入り、バンク・オブ・アメリカ(BOA)、ゴールドマンサックス、JPモルガンなどが米証券取引委員会(SEC)に提出した2017年度のアニュアルレポート(10-K)に、リスク要因として初めて、「暗号通貨」や「分散型台帳技術」などの存在が明記されました。
ゴールドマンサックスは、次のように書いています。
Item 1A. RISK FACTORS 「…分散型台帳技術やその応用分野が拡大しているが、これらの技術はまだ新しく、サイバー攻撃も受けやすい。それ以外にも固有の弱さを併せもつ。このような技術に結びつけられた金融商品を利用する顧客の便宜を図ること、あるいはこのような技術を基盤としたプラットフォーム開発を行う企業への投資…などによって生ずるリスクに我々はさらされることになる…」
ゴールドマンサックスが主に技術的リスクを指摘するのに対し、BOAはさらに一歩踏み込み、競争上のリスクにも言及しています。
Item 1A. RISK FACTORS 「…顧客は、我々が投機的でリスキーとみなしている分野(暗号通貨など)のビジネスや商品を提供する他の市場参加者とビジネスすることを選択する可能性がある…」
嫌いつつも特許出願は怠らず。しかし…
しかし大手銀行も新技術を懸念し、嫌悪するだけではありません。一方で、盛んに特許出願をしています。とくにBOAの特許出願は、金融業界の中でも群を抜いているといいます。
2017年時点でBOAが保有するフィンテック関連特許(および特許出願)の総数は、2,547件。これは2位のJPモルガン・チェースより2,000件以上、上回っています。2016年の記事で紹介したBOA自身の件数約500件と比べても相当の伸びといえます。
しかし…これをはるかに上回るのがテクノロジー・カンパニーたち。BOAを含む世界の大手銀行トップ15行が保有するフィンテック特許のすべて足しても、IBMが保有するフィンテック特許総件数の5分の1、マイクロソフトの4分の1、グーグルの半数なのだそうです。
この驚きの数字を示したのはイギリスの特許分析会社Cipherの“IP STRATEGY REPORT” – Technology disruption through a patent lens (July 2018)です。
また、「ドットコム・バブル」の経験を踏まえ、現在の「クリプト・バブル」状況においてとるべき特許・知財戦略のあり方などについても触れたいと思います。
(営業推進部 飯野)
参考記事:
“Goldman Sachs Echoes BofA In Citing Cryptocurrency risk For SEC Filing” Jordan Daniell, ETHNews, 2/27/2018;
“Bank of America 10-K SEC Filing Reveals Cryptocurrencies are Threat to BoA Business” Bitcoin Exchange Guide News, 6/30/2018;
“Banks Hate Cryptocurrency, But Are Filing Patents Anyway” Bridget Smith, KNOBBE MARTENS, JDSupra 9/6/2018;
“Tech giants leave banks in the dust in race for fintech patents” Mark Cobley, finlondon.com 8/2/2018;
“Tech giants eclipse bankd in fintech patent race, report shows” finadium.com 8/2/2018