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2019.04.25
2019年4月23日、第13回全国人民代表大会常務委員会10回会議において、商標法第4次改正が可決されました。改正法は2019年11月1日より施行される予定です。主な改正点は以下の通りです。
1.使用を目的としない悪意の商標登録出願への対応
中国では商標出願件数が激増しているが、使用の意図を有さない商標ブローカーによる悪意の先駆け出願、大量出願が横行し、正当な当事者が逆に冒認出願された商標に基づき権利行使を受けるケースも散見され、重大な問題となっていた。これに対応するため、本改正においては、「使用を目的としない悪意の商標登録出願」を拒絶理由、絶対的異議理由、絶対的無効理由として明文化する(第4条1項、第33条、第44条1項)と同時に、悪意による商標登録行為を行政罰の対象とし、悪意による権利行使を裁判所による司法罰の対象とすることが規定された(第68条4項)。さらには、依頼人の上記事情を知り又は知り得た代理機構はその依頼を受けてはならないこととし(第19条3項)、これに違反した代理機構及びその責任者、管理者も行政罰の対象となることが規定された(第68条1項3号)。
2.損害賠償額の引き上げ
現行法では、商標権侵害による損害賠償は、(1)権利者の損失、(2)侵害者の利益、(3)ライセンス料の合理的倍数の順に確定され、悪意による侵害であり且つ状況が深刻である場合は、1~3倍の懲罰的損害賠償を認めてもよいこととしている。また、上記(1)~(3)のいずれも確定できない場合には、裁判所は侵害の状況により裁量に基づき300万元以下の損害賠償を認定してもよいとしている。本改正において、懲罰的損害賠償の倍率は「1~3倍」から「1~5倍」に引き上げられ、且つ裁量に基づく賠償額も「300万元以下」から「500万元以下」に引き上げられた(第63条1項、3項)。
3.侵害品等の廃棄命令
現行法では、侵害品等をどのように処理するかについて明文規定はなく、商標を削除すればすぐに商品が流通できてしまう懸念もあり、侵害者に対するペナルティ及び権利者の保護が不十分だと認識されていた。そこで本改正では、侵害品について裁判所は権利者の請求により原則廃棄を命じなければならないこととした。そして、主に侵害品を製造するための材料、道具についても原則廃棄を命じ且つ補償を行わないこととし、例外的には、上記材料及び道具を商業的に流通させてはならないことを命じ且つ補償を行わないこととしてもよいとした(第63条4項)。
また、侵害品については、登録商標を削除したことのみをもって商業的に流通させてはならないこととした(第63条5項)。
NGB商標部では、今後も、本改正の動きに注視し、情報発信をして参ります。
[商標部 範囲(中国弁護士)]
※協力 NGB顧問・張華威(中国弁護士)