- 知財情報
- アーカイブ
2019.05.29
2019年5月1日より、フィンランドにて改正商標法が施行されています。欧州連合加盟国として、EUTM(欧州連合商標)とのハーモナイズを主眼に置いた改正といえます。
最も注目すべき点は、クラスヘッド商品・役務記述の書き換えでしょう。商品・役務のクラスヘッド指定は当該クラスの全商品・役務をカバーするものではないとの欧州連合裁判所判断を踏襲し、旧法下での全類指定に相当する商品・役務記述の登録に対し、個別商品・役務記述への書き換えの機会が与えられました。それぞれの登録が持つ次回更新期限までに書き換えを行わない場合、クラスヘッド記述が、包括的ではなく、文字面の意味の権利範囲と見做されることになります(一部に対し例外あり)。2013年12月31日までに出願された商標で、出願当時に全類指定に相当する商品記載がなされた件が対象となりますが、案件ごとに出願日、商品・役務記述を確認し、書き換え対象であるか否かの判断が必要となります。その他の主な改正点は以下の通りです。
・商標取消請求の管轄は、従来、裁判所 (Market Court) のみでしたが、特許庁に対して提起する行政ルートも選択可能となります。これまでの司法ルートに比べ、低廉な費用が期待できます。
・商標の視覚的表示要件が廃止されました。電子ファイルでの提出等、商標態様の表示方法が多様化され、ホログラム等の非伝統商標の出願に呼応した改正です。
・新法下で出願されるモノクロ商標の権利範囲に、色彩のバリエーションは含まれなくなります。
・商標登録の権利期間の起算日が、登録日から出願日に変更となります。
・会社名が他社の商標と類似する場合、登記に記載された業務の一部または全部が特許庁の裁定により取り消される可能性が生まれました。5年間、その社名が使われていない業務が対象となります。
BREXITに揺れる欧州連合ですが、英国以外の加盟国では、上記改正のように、同調を強める動きもあります。商品・役務記述の書き換えは、いずれ、他の加盟国も追随する可能性があり、権利者側は、その都度対応を迫られることになるでしょう。「ハーモナイゼーション」は、その響きの良さとは裏腹に、今暫くは、商標担当者を悩ませる言葉かもしれません。
(商標部 関口)