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2019.09.19
主な改正点は以下の通りです。
1.出願日の認定要件
(1)出願時の明細書および図面はいかなる言語でも認められます(規則71条(d))。
(2)先になされた出願の明細書および図面を引用して、当該特許出願の明細書および図面の代わりとすることができます(規則67条(1))。この場合、先の出願の出願国の名称、出願番号等を記載した声明を提出する必要があります(規則67条(2)(a))。また、その声明の提出日から2カ月以内に、先の出願の写しを提出するか、あるいは特許庁長官により特定されたデジタルライブラリーで基礎出願の写しを利用可能とし、その旨を特許庁長官に通知する必要があります(規則67条(2)(b))。
(3)出願時に欠落してしまった明細書の一部または図面を補完することができます(規則72条)。
(4)電子出願により、カナダ知的財産庁の閉庁日(土日祝、その他)でも出願日が確保されます(規則10条(4))。
なお、明細書が英文または仏文ではない場合、出願人は英文または仏文の翻訳文を提出する必要があります(規則15条(3))。提出しない場合、翻訳文の提出要求が通知され、通知から2カ月以内に翻訳文を提出しなければなりません(規則15条(4))。
2.PCT国内移行期限
原則として、PCT国内移行を優先日から30カ月以内にしなければなりません(規則154条(1)、(2))。2019年10月30日よりも前にPCT国内移行をする場合には、追加手数料の支払いのみで、優先日から42カ月までにPCT国内移行手続をすることができます。2019年10月30日以後は、優先日から30カ月の期限に遅延した場合、42カ月までにPCT国内移行手続をするためには、優先日から30カ月以内にPCT国内移行をしなかったことが故意ではなかった旨の声明とともに権利の回復を請求する必要があります(規則154条(3))。権利回復の費用は200カナダドルです(規則154条(4)、表2項目22)。
3.優先権の回復
非PCT出願について、先の出願日から14カ月以内に優先権の回復の申請をすることができます(特許法28.4条(6)、規則77条(1)(a))。この際、遅延が故意ではなかったことの声明を提出する必要があります(28.4条(6)(b)(ii))。
PCT出願に関しては、PCT受理官庁による優先権の回復が認められた場合(PCT規則26の2.3)、優先権はカナダで有効となります(規則162条(c))。
国際段階で優先権が回復されなかった場合でも、PCTの国内移行日から1カ月以内に、優先権の回復を請求することができます(特許法28.4条(6)、規則77条(1)(b))。この際、遅延が故意ではなかったことの声明を提出する必要があります(28.4条(6)(b)(ii))。
4.優先権書類
特許庁長官により特定されたデジタルライブラリーで基礎出願の写しを利用可能とし、その旨を特許庁長官に通知すれば足ります(規則74条(1)(b))。
5.審査請求期限
(1)原出願の審査請求期限
PCT出願日もしくはカナダ出願日が2019年10月30日より前の場合は、PCT出願日もしくはカナダ出願日から5年です。
PCT出願日もしくはカナダ出願日が2019年10月30日以降の場合は、PCT出願日もしくはカナダ出願日から4年です(規則81条(1)(a))。
(2)分割出願の審査請求期限
親出願日が2019年10月30日より前の場合は、親出願日から5年または分割出願日から3カ月です。
親出願日が2019年10月30日以降の場合は、親出願日から4年または分割出願日から3カ月です。(規則81条(1)(b)。
6.指令書への応答期限
2019年10月30日より前に発行された指令書への応答期限は、6カ月(延長不可)です。
2019年10月30日以降に発行された指令書への応答期限は、4カ月(2カ月延長可)です(規則131条(1))。
7.認可通知への応答期限
2019年10月30日より前に発行された認可通知への応答期限は、6カ月(延長不可)です。
2019年10月30日以降に発行された認可通知への応答期限は、4カ月(延長不可)です(規則86条(1))。
8.訂正
(1)優先権主張日の訂正
出願日に関わらず、正しい優先日または訂正前の優先日のいずれか早い日から16カ月以内に、訂正が可能です(規則73条(4))。
(2)優先権主張のその他の項目である国名・官庁名・番号の訂正
登録料納付時以前に、訂正が可能です(規則73条(5))。
(3)出願人の訂正(身元の誤りがある場合)
非PCTルートでは出願公開前あるいは譲渡手続き日以前(規則154条(6))、PCTルートでは移行日から3カ月以内あるいは譲渡手続き日以前に(規則104条)、訂正が可能です。
(4)発明者の訂正(身元の誤りがある場合)
認可通知が送達されるまで、訂正が可能です(規則105条)。
(5)出願人の氏名・名称の訂正、発明者の氏名の訂正(実際の身元の誤りは無い場合)
登録料納付時もしくはそれより前に、訂正が可能です(規則106条)。
(6)登録後の訂正請求
特許権者名または発明者名の誤記、明細書および図面の誤記は、登録日から12カ月以内に手数料200カナダドルを支払うことで訂正請求が可能です(規則109条(1))。
明細書および図面の誤記訂正請求には、特許発行時の明細書または図面から、その誤記が明細書および図面が意図していないものであり、訂正後の内容以外のものが意図されていないことが当業者にとって明らかであることが必要です(規則109条(1)(b))。
カナダ知的財産庁による誤記は、登録日から12カ月以内に訂正請求が可能です。なお、この場合には手数料はかかりません(規則107条(1))。
参考:
カナダ政府ニュースリリース
https://www.canada.ca/en/intellectual-property-office/news/2019/07/canada-has-formally-ratified-the-patent-law-treaty.html
https://www.canada.ca/en/intellectual-property-office/news/2019/07/canada-is-modernizing-its-patent-regime-to-implement-the-patent-law-treaty-and-the-new-patent-rules-will-come-into-force-on-october-30-2019.html
カナダ特許規則
http://canadagazette.gc.ca/rp-pr/p2/2019/2019-07-10/html/sor-dors251-eng.html
特許法条約の概要(特許庁)
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/wipo/plt_20160210.html
特許法条約(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000070118.pdf
特許法条約に基づく規則(特許庁仮訳)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/joyaku/tokkyoho/document/index/kisoku.pdf
(記事担当:特許第2部 大條、三俣)