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2020.11.12
改訂の主な内容は、以下の通りです。
1. 図面の開示要件の緩和
図面で開示されていない内容は、原則的に、「意匠登録を受けようとしない部分」と見なされる旨、明文規定されました。さらに、省略の理由に関して「意匠の説明」に明記する必要はないと規定されました。
ただし、「図面が同一又は対称」、「その他、その意匠の内容を直接知り得る場合」に図面を省略する場合は、出願人が図面を省略した理由を「意匠の説明」において明記する必要があります。なぜなら、この場合に省略された図面は、「意匠登録を受けようとしない部分」ではないからです。
なお、意匠登録を受けようとする部分が、提出された図面に十分に開示されておらず、権利を求める範囲が不明瞭である場合には、「開示された図面に基づいて実施可能」という要件を備えていないと判断される可能性がありますので注意が必要です。
2. 分割出願に関する規定の緩和
原出願にて開示されている範囲を越えなければ、分割出願が認められる旨、明文規定されました。これにより、原出願の部分について意匠登録を受けようとするものに関しても分割出願が可能となりました。
2013年の意匠審査基準改訂によって、建築物外観や内装デザイン等は意匠登録可能でしたが、この度の改訂によって、建築物外観や内装デザイン等が意匠登録の対象となる旨、明確に規定されました。
4. 画像意匠に関する規定の改訂
現行法において、意匠には物品性が求められましたが、改訂後は、画像意匠はコンピュータプログラムを介して生成される2次元又は3次元の仮想図形である、と再定義されたことにより、画像の意匠に関して物品性が求められなくなりました。
また、画像意匠の名称に関しても、「コンピュータプログラム製品」とすることが認められるようになったため、特定の製品を指定することなく、より広範な権利範囲を得られるようになりました。しかしながら、意匠の名称を「コンピュータプログラム製品」にした場合、コンピュータプログラムが組み込まれた全ての電子機器に対して権利範囲が及ぶ一方で、それ以外の物品、例えば単なる模様として物品に印刷されたもの等に対して効力は及びません。
さらに、画像意匠の図面において、画像が表示される物品を示す破線を描く必要がない旨、明文規定されました。ただし、画像意匠の一部のみについて意匠登録を受けようとする場合には、その部分を破線で囲むことで部分意匠登録とすることが可能です。
5. 色彩の開示要件に関する規定
現行法においては、色彩の保護を求めない意匠の図面は、線画、グレースケールのコンピューターグラフィックス、又は、モノクロ写真にて提出するよう規定されていました。改訂後は、色彩の保護を求めない意匠出願の図面をグレースケールのコンピューターグラフィックス、又は、モノクロ写真にて提出する場合、意匠の範囲を明確にするために、「図面に表れる色彩(白黒)の保護を求めない」という説明を記載しても良いとされました。
6. 色彩を含む意匠の新規性、創造性判断原則の修正
改訂前は、当該意匠が先行意匠に対して色彩以外の差異がない場合は創造性が無いとされていましたが、改訂後は、新規性が無いと判断されることとなりました。
7. 技術的形態のみに基づいて表された物品の意匠の説明の補充
「その意匠の外観が技術的形態によってのみ表されており、視覚的な美感のために装飾される余地が全くないものは、技術的形態のみに基づいて表された物品の意匠に該当する」という説明が補充されました。
(参考)
・台湾知的財産局HP「7月23日、台湾知的財産局が意匠審査ガイドライン改訂の公聴会を開催」
https://www.tipo.gov.tw/en/cp-282-880529-e6f30-2.html
・修正「専利審査基準」第三編 設計専利実体審査 第1、2、3、7、8、9章
https://www.tipo.gov.tw/tw/cp-85-881881-d8fd4-1.html
・Saint Island Intellectual Property Group事務所(台北)ニュースレター
http://www.saint-island.com.tw/JP/Knowledge/Knowledge_Info.aspx?IT=Know_1_4&CID=594&ID=1825
・Lee & Li Attorney at Law 事務所 ニュースレター
https://www.leeandli.com/JP/NewslettersDetail/6546.htm
記事担当:特許第1部 永田 智大