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- 法律・法改正
2021.11.11
特許部 寺岡裕芳
このたび、韓国における「特許法・商標法・デザイン保護法の一部改正案」が韓国国会を通過して2021年10月19日に公布されました。公布の日より6か月後の2022年4月20日から施行される予定です。
主な改正内容について、以下の通り案内します。
なお、以下では、デザイン保護法に関する改正点について(意匠)と表記します。
1.(特許・商標・意匠)再審査請求の請求期間を3か月に延長
拒絶査定に対する不服審判請求(再審査請求)の請求期間が現行の30日から3か月に延長となります。
米国、日本、中国等の主要国における請求期間が3か月であることを勘案し、出願人に再審査請求についての十分な準備期間を与えるため、請求期間が3か月に延長されます。
また、特許査定から設定登録を受ける前までの期間にも再審査請求が可能となります。
2.(特許・商標・意匠)消滅した権利の回復要件の緩和
書類提出、手数料納付等の期間の徒過により権利が消滅した場合、現行法では、出願人の「責任を負うことができない事由」で権利が消滅した場合に限り、2か月以内の手続きの追完が認められていました。
改正法では、「責任を負うことができない事由」が「正当な事由」に変更されます。
「正当な事由」の例としては、持病による入院、手数料口座振替のエラーなどが挙げられています。また、新型コロナウイルスに感染し、突然入院して手続きをすることができなかった場合にも、救済が可能となります。
3.(特許)再審査請求後の分離出願制度を新設
拒絶査定に対する不服審判請求(再審査請求)についての棄却審決(拒絶査定を維持)を受けた後に、拒絶されなかった請求項のみを分離して出願できる制度が新設されます。
4.(商標・意匠)登録査定後の職権再審査制度の新設
登録査定を受けた商標・意匠出願について、設定登録される前に、明らかな拒絶理由を審査官が発見した場合に、職権により再審査できる制度が新設されます。
なお、特許出願については、2016年に同様の制度が設けられました。
5.(特許・商標・意匠)権利移転による共有者の通常実施権を保護
共有の特許権などに対して共有物分割請求をする場合、現物分割が認められないとの判例があります(2013ダ41578)。このため、共有の特許権などを競売に付し、その代金を持ち分比率により分配する代金分割方法によらなければ分割をすることができません。この場合、共有物分割請求をした共有者を除く他の共有者は本人の意思とは関係なく持分を喪失することになり、事業の継続が困難となりました。
改正後は、共有物分割請求をした共有者を除く他の共有者に通常実施(使用)権が付与され、継続中の事業が保護されることになります。
また、質権設定の前に商標を使用している場合に、競売などにより商標権が移転されても、商標権者に通常実施権が付与されます。(特許・意匠には導入済み)
6.(意匠)再審査請求時の補正機会の拡大
現行法では、意匠出願の拒絶査定に対して、「不服審判請求(再審査請求)時」のみに補正書が提出可能ですが、改正法では、補正書の提出可能期間が「再審査請求の期間内」に拡大されます。
(参考)
・韓国特許庁の発表(2021年9月30日付)
https://www.kipo.go.kr/kpo/BoardApp/UnewPress1App?a=&board_id=press&cp=2&pg=1&npp=&catmenu=m03_05_01&sdate=&edate=&searchKey=&searchVal=&bunryu=&st=&c=1003&seq=19186
・「2015年特許法改正公聴会・説明会 参加報告書」ジェトロソウル事務所
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/kr/ip/seminar_report/2015patentlawpublichearing.pdf
・情報提供:Hanyang事務所(ソウル)、Bothwin事務所(ソウル)