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2022.05.09
特許部 新井智香子
マレーシアにおける改正特許法及び改正特許規則が2022年3月18日から施行されました。
主な改正事項は、以下の通りです。
■ 特許庁費用の値上げ
特許庁費用が全般的に値上げされました。
また、出願時のクレーム数に応じた段階的な加算費用が導入されました。詳細は以下の通りです。
10を超えるクレームに対して、
クレーム11~20の各項につき RM20
クレーム21~30の各項につき RM30
クレーム31~40の各項につき RM40
クレーム41~の各項につき RM50
※1RM≒30JPY(2022年4月20日時点)
■ 出願公開(New Section 33D)
すべての出願(国際出願を除く)は、出願日(又は優先日)から18か月後に官報で公開されます。ただし、出願日(又は優先日)から18か月以内に放棄、取下げ、みなし取下げ、又は、拒絶された場合や、出願が公序良俗に反する情報を含むことが判明した場合には、公開されません。改正前は、請求により出願内容を閲覧することは可能でしたが、官報での出願公開はされていませんでした。
なお、所定の費用(RM 150)を支払うことで、早期公開の申請が可能です。
■ 第三者情報提供(New Section 34A and New regulation 28A)
何人も、所定の費用(RM 150)の支払いとともに、特許出願の特許性に関する事項(規則上、新規性及び進歩性のみが対象)についての説明や証拠書類を含む見解を提出することができます。
情報提供の時期的要件は以下の通りです。
- ナショナル出願の場合、マレーシアでの出願公開日から3か月以内
- 国際出願の場合、マレーシアへの国内段階移行日から3か月以内
■ 実体審査請求(Section 29A)
実体審査請求時に、対応出願(マレーシア国外の所定国の対応出願や国際出願)に関する情報や書類の提出を出願人に求める規定が削除されました。
また、実体審査請求について、審査請求の延期申請はできなくなりました。修正実体審査請求の場合のみ、所定の費用(RM 150)の支払いとともに、審査請求の延期を申請できます。
■ 分割出願(Section 26B)
出願が特許付与、拒絶、みなし取下げ、取下げ、又は、放棄された場合、分割出願を行うことは認められないことと、出願人による自発的な分割出願期限の延長は認められないことが明文化されました。
■ 拒絶理由を含む審査報告書(Adverse Report)に対する応答期限(Subregulations 27C(4) and 27D(5))
拒絶理由を含む審査報告書に対する応答期限は3か月(改正前は2か月)になりました。
■ 優先権の回復(Section 27 and New regulation 23A)
出願人は、所定の費用(RM 150)の支払いとともに、優先権の回復を請求できます。ただし、優先権期間内に特許出願しなかったことが故意ではない場合に限られます。
優先権の回復請求の時期的要件は以下の通りです。
- ナショナル出願の場合、優先権期間の徒過日から2か月以内
- 国際出願の場合、優先日から30か月の徒過日から1か月以内、又は、早期審査請求後1か月以内
■ 失効した特許の回復(Subsection 35(A)(1))
失効した特許の回復の申請期間は、特許の失効通知が官報で公開された日から12か月(改正前は2年)に短縮されました。
以下の規定は改正特許法に含まれていますが、後日施行予定です。
■ 特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約への加盟(New Section 26c and New subsection 78O(1A))
微生物に関する発明について、その微生物が一般に入手できず、当業者がその発明を実施できるような方法で特許出願に記載することができない場合、特許出願日までにその微生物を国内寄託機関又は国際寄託機関に寄託することが義務付けられました。国際寄託機関への微生物の寄託は、ブダペスト条約に従って行わなければなりません。国内寄託機関又は国際寄託機関への微生物の寄託により、特許出願における開示の要件を満たしていると認められます。なお、マレーシアは、2022年3月31日にブダペスト条約に正式に加盟しました。
■ 公衆の閲覧(Sections 34(1)(f)(g) and (h))
出願公開後、出願内容や書誌事項に加えて、調査及び審査報告書、出願人が特許庁に提出した特許出願に関する書簡、並びに、出願人又はその他の者が特許庁に提出した特許文献及び非特許文献は、所定の費用(1時間あたりRM 30)の支払いにより、公衆の閲覧に供されることになりました。
■ 付与後異議申立て(New Sections 55A and 56A)
いかなる利害関係人も、特許付与の公開日から所定の期間内に、無効理由に関するSection 56(2)(a), (b), or (c)で特定される理由に基づいて、付与後特許に対する異議を申し立てることができる制度が導入されました。異議申立ての終結時には、(a)特許維持、(b)補正を条件として特許維持、又は、(c)特許無効、のいずれかの判断がなされます。
また、異議申立てが係属中の場合、利害関係人は、その異議申立ての両当事者が裁判所での無効化手続きを開始することに同意しない限り、又は、利害関係人が侵害訴訟の被告でない限り、特許権者に対してSection 56に基づく無効化のためのいかなる訴訟手続きも開始できません。
(参考)
・マレーシア改正特許法2022
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/02-PATENTS-AMENDMENT-ACT-2022.pdf
・マレーシア改正特許規則2022
https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/PERATURAN-PERATURAN-PATEN-PINDAAN-2022.pdf
・情報源:
Advanz Fidelis IP Sdn Bhd事務所(セランゴール州)
https://www.advanz.com.my/malaysia-patent-law-amendment
Mirandah Asia事務所(クアラルンプール)
https://mailchi.mp/mirandah/726mboziqs-1049669?e=5cbdb9d0a9
Skrine事務所(クアラルンプール)
https://www.skrine.com/insights/alerts/march-2022/patent-act-amendment-changes-to-patent-procedures
Shook Lin & Bok事務所(クアラルンプール)
http://shooklin.com.my/legal-update/patents-amendment-act-2022-implementation-date-18th-march-2022/
Henry Goh & Co Sdn Bhd事務所(クアラルンプール)
https://henrygoh.com/patents-amendment-act-2022-and-implementing-regulations/