- 中国
- 特許
2022.05.12
NGB株式会社 顧問 中国弁護士・日本付記弁理士 張華威
2022年4月21日、中国最高人民法院は「中国法院知的財産司法保護状況(2021年)」(以下,「白書」という)を発表した。「白書」によれば、2021年の全国人民法院の各種知的財産関連事件(第一審,第二審,再審を含む)の新受件数は642,968件(対前年比22.33%増)であり、既済件数(前年からの繰越事件を含む、以下同じ)は601,544件(対前年比14.71%増)であった。
最高人民法院の民事事件の受理件数と既済件数はそれぞれ4,243件と3,557件であり、2020年に比べそれぞれ22.28%増と9.11%増という結果となった。
地方各級人民法院の民事第一審事件の新受件数と既済件数はそれぞれ550,263件(対前年比24.12%増)と515,861件(対前年比16.52%増)を記録した。上記新受件数の内訳は以下のとおりである。
* 専利(特許権、実用新案権、意匠権を含む)は31,618件(対前年比10.98%増)
* 商標は124,716件(対前年比59.62%増)
* 著作権は360,489件(対前年比14.99%増)
* 技術契約は4,015件(対前年比22.52%増)
* 競争関連民事事件は8,419件(対前年比78.26%増)
* その他知的財産民事紛争事件21,006件(対前年比38.01%増)
2021年は知的財産権の全分野において大幅な増加傾向がみられ、特に商標と競争関連事件の伸び率が際立つ結果となり、専利民事事件も年間3万件を突破した。上記統計データを示すグラフは以下のとおりである。
2021年、中国ではめまぐるしい法環境の変化があった一年であった。2021年1月1日より民法典及び18の知財関連司法解釈の改正が施行された。6月1日より専利法第4次改正及び著作権法第3次改正が施行され、懲罰的損害賠償や立証の容易化をはじめとする知財保護の強化が図られた。12月24日には種子法が改正され、植物新品種権の保護強化が図られた。また、最高人民法院は新たに「知的財産民事事件の審理における懲罰的損害賠償の適用に関する解釈」、「登録申請医薬品に関連する専利権紛争民事事件の審理における法律適用問題に関する若干規定」、「植物新品種権紛争事件の審理における具体的な法律適用問題に関する若干規定(二)」などの司法解釈を制定した。
知的財産権の権利者が一層有利になる法環境が整いつつある中、2021年9月には中国共産党中央委員会及び国務院が共同で「知的財産強国建設要綱」を発表し、2035年までに知財強国をめざす国家戦略を打ち出した。その後まもなく、中国国務院は2021年10月9日に十四五(注:14番目の5年計画を指し、具体的には2021年~2025年を意味する)国家知財保護及び運用計画を公表した(具体的な内容は以下の記事を参照:https://www.ngb.co.jp/resource/news/3740/)。これらの動きは知財訴訟事件の増加に拍車をかける結果となり、2021年度の知財訴訟事件は全面的に増加傾向となった。
このような状況を踏まえ、当社では、中国における専利・商標の権利化や紛争支援サポートに力を入れており、訴えへの備えとして中国の公証役場を利用した防衛公開の証拠保存サービス及びトラステッド・タイムスタンプ(中国名「可信时间戳®」)のサービスも提供している。また、より迅速かつ分かりやすい情報発信を実現するために、公式YouTubeチャンネルも開設したので、参照されたい。
以上