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2023.06.07
NGB株式会社 顧問 張華威
2023年4月20日、中国最高人民法院は「中国法院知的財産司法保護状況(2022年)」(以下,「白書」という)を発表した。「白書」によれば、2022年の全国人民法院の各種知的財産関連事件(第一審,第二審,再審を含む)の新受件数は526,165件(対前年比18.17%減)であり、既済件数(前年からの繰越事件を含む、以下同じ)は543,379件(対前年比9.67%減)で、全体としては久々に減少傾向となった。
最高人民法院の知的財産権民事事件の受理件数と既済件数はそれぞれ3,786件と3,073件であり、2021年に比べそれぞれ10.77%減と13.61%減という結果となった。
地方各級人民法院の民事第一審事件の新受件数と既済件数はそれぞれ438,480件(対前年比20.31%減)と457,805件(対前年比11.25%減)であった。上記新受件数の内訳は以下のとおりである。
* 専利(特許権、実用新案権、意匠権を含む)は38,970件(対前年比23.25%増)
* 商標は112,474件(対前年比9.82%減)
* 著作権は255,693件(対前年比29.07%減)
* 技術契約は4,238件(対前年比5.55%増)
* 競争関連民事事件は9,388件(対前年比11.51%増)
* その他知的財産民事紛争事件17,717件(対前年比15.66%減)
上記統計データを示すグラフは以下のとおりである。
[2022年第一審知財民事新受事件の種別内訳]
2022年は著作権、商標などの非技術系の知的財産権にかかる訴訟は減少傾向で、特に著作権関連事件の減少が著しい結果となった。知的財産権関連事件のうち、著作権と商標が占める割合が多いため、知的財産権の訴訟件数が減少という結果となっているが、専利、技術契約、競争関連民事訴訟は増加し、特に専利民事訴訟は20%以上もの大幅な増加を記録している。
中国では中国共産党中央委員会及び国務院も共同で知的財産強国建設綱要を発表し、知財保護の強化を推し進めている。2021年6月に専利法の第4次改正が行われ、専利侵害行為に対する損害賠償額の上限が大幅に引き上げられ、懲罰的損害賠償制度が導入された。まだ専利法実施細則及び専利審査指南の改正作業が完了しておらず、開放許諾制度、存続期間延長、部分意匠などの新しい制度は実質的に開始されていないが、ユーザの期待は大きく、中国では訴訟を競争の手段として利用する動きが強まり、専利民事訴訟件数の大幅な増加につながったものとみられる。
このような状況を踏まえ、当社では、中国における専利・商標の権利化や紛争支援サポートに力を入れており、訴えへの備えとして中国の公証役場を利用した防衛公開の証拠保存サービス及びトラステッド・タイムスタンプ(中国名「可信时间戳®」)のサービスも提供している。また、より迅速かつ分かりやすい情報発信を実現するために、公式Youtubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCJxeBYK3FlJ3goWqY5b4Twg)も開設したので、参照されたい。
以上