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2023.10.26
特許部 寺岡裕芳、梶本陽子
2023年8月23日、ベトナム政府は、2023年1月1日に改正されたベトナム知的財産法に関する規則を含む政令(Decree 65/2023/ND-CP)を発表した。
本稿では、主に特許に関して明確化されたポイントを7つ抜粋して紹介する(なお、意匠に関してはこちらを参照)。
1. 安全管理/外国出願許可
改正法では、「国家の安全保障または防衛に影響を与える技術分野に属する発明」がベトナムで創作され、出願人がベトナムに永住するベトナム人あるいはベトナムの組織である場合に 、ベトナムへの第1国出願義務があると規定されている。今回の政令14条には、対象となる技術分野と、安全保障管理プロセスに関する詳細な規定が定められた。安全保障管理プロセスにおいて、発明が国家の安全保障または防衛に影響を及ぼす技術分野に属するか否かは、国防省(Ministry of National Defense )および公安省(Ministry of Public Security )によって判断される。
これにより、ベトナムに第1国出願を行うべきか否かを判断する材料が与えられたといえる。ただし、発明の一部がベトナムで創作された場合の状況については明確に規定されていない。
2. 発明者への報酬(特許・意匠)
改正法によれば、特許権者は、発明者と合意に基づき、発明者に報酬を提供する義務を負うとされており、そのような合意がない場合についての固定報酬の規定を設けているが、報酬の支払時期については規定されていない。今回の政令では、特許権者と発明者との合意がない場合についての報酬の支払時期が規定された。
3. 発明のタイトル
従来の規則では、発明の主題をタイトルに含めることとされていたが、独立請求項が多数ある場合には、発明の主題を全てリストアップしたタイトルにすると冗長になるため、主題の一部のみをタイトルとすることが慣例的に認められていた。今回の政令では、この慣例に準じて、主題の一部のみをタイトルとしても良いことが明確化された。
4. 医薬品認可の遅れによる特許権者への補償
改正法第131a条は、医薬品の製造販売承認取得が遅れた場合の特許権者への補償を規定している。今回の政令42条において、この補償を請求するための手続きの詳細が規定された。
5. 電子特許証(特許・意匠・商標)
今回の政令の発効日(2023年8月23日)以降、紙媒体での特許証の発行を出願時に明示的に申請しない場合には、電子媒体で特許証が発行される。しかしながら、出願後に特許証の媒体を変更できるか否か等については明確化されておらず、追って規定される予定である。
6. 秘密発明
今回の政令では、担当当局により国家機密であると判断された発明(秘密発明)についての出願手続きの詳細が規定された。秘密発明についての出願は、紙媒体での手続きが必要とされ、機密が解除されるまで公表されない。
7. 出願の一部についての出願変更
ベトナムでは、特許付与または拒絶査定の前までであれば分割出願を行うことが可能であり、また、出願の係属中に特許出願から実用新案出願(またはその逆)に変更することができる。出願人が出願の一部のみを出願変更したい場合には、具体的な規定が設けられていなかったが、今回の政令17条では、実際の運用に合わせて、分割出願後に出願変更することが明確化された。
(参考)
・INVESTIP事務所ニュースレター(2023年9月7日付)
VIETNAM – Decree No. 65/2023/ND-CP issued with changed/additional provisions of the IP system
・NGB知財ニュース(2023年2月21日付)
【特許・意匠ニュース】 ベトナム、知的財産の改正法が2023年1月1日より施行
https://www.ngb.co.jp/resource/news/4491/