- 米国
- 通達・運用変更
2024.01.09
特許部 小澤由衣
2023年11月30日、米国特許商標庁(USPTO)は、半導体技術パイロットプログラム(Semiconductor Technology Pilot Program)を発表しました。本パイロットプログラムは、半導体製造に関する発明に係る特許出願の審査を迅速化することで、半導体産業の向上を促すことを目的としています。
本パイロットプログラムの対象となる出願には特別なステータス(special status)が付与され、第一回実体審査(限定要求を含む)が完了するまで優先的に審査されます。なお、本パイロットプログラムについては、37 CFR 1.102(d)に基づく請願書(petition to make special)に係る手数料は免除されます。
USPTOは、下記(1)または(2)のいずれか早い方に至るまで、本パイロットプログラムの申請を受理します。
(1) 2024年12月2日まで
(2) 本パイロットプログラムに基づいて特別なステータスが付与された出願が1000件に達するまで
本パイロットプログラムの対象となる出願は、次の要件を満たしている必要があります。
・半導体デバイスを製造するための装置またはプロセスを含み、かつ、共同特許分類(CPC:Cooperative Patent Classification)のH10(半導体装置:他に分類されない電気的固定装置)またはH01L(H10に包含されない半導体装置)に分類される請求項を一つ以上含む特許出願であること
・出願にあたり、明細書・請求項・要約書がDOCXフォーマットにてPatent Centerを使用して電子的に提出されていること
・出願と同時または出願から30日以内に、特定のフォーム(PTO/SB/467)による請願書(petition to make special)がPatent Centerを使用して電子的に提出されていること
・請願書には、以下の四点を示すこと
(1) パイロットプログラムの技術要件を満たすクレームに係る発明が、半導体デバイスの製造を改善すると出願人が誠実な信念を持っていること
(2) パイロットプログラムの技術要件を満たすクレームに係る発明が対象とするプロセスまたは装置が、半導体デバイスの製造に主に焦点を置くものとして明細書に開示されていること
(3) 審査の迅速化が、半導体デバイス製造の増加、半導体製造コストの低下、半導体サプライチェーンの回復向上など、半導体製造業界に好影響をもたらすと出願人が誠実な信念を持っていること
(4) 本パイロットプログラムに基づいて請願書が提出された他の4件を超える出願において、発明者または共同発明者として掲載されていないこと
対象となる出願種別は、通常出願のほか、PCT出願の米国国内段階移行出願、各種派生出願(PCT出願からのバイパス継続出願、継続出願、分割出願、CIP出願)を含みます。但し、先行する2以上の米国通常出願または米国指定を含むPCT出願の出願日を享受する派生出願は本パイロットプログラムの適用を受けられません。一方、先行する1以上の米国仮出願の優先権や1以上の外国出願の優先権の主張は本パイロットプログラムの適用を妨げるものではありません。
なお、請願書提出時点のみならず、請願書提出後の出願係属期間全体にわたり、クレーム超過費用の対象となるクレーム構成(3項を超える独立クレーム、20項を超える総クレーム、マルチ従属クレーム)を導入しないことが求められます。
また、本パイロットプログラムに基づく優先審査の取下に関する規定はありません。本パイロットプログラムにて特別なステータスが付与された出願を放棄し、継続出願等の派生出願での権利化を選択する場合、親出願の特別なステータスは派生出願に自動的に付与されません。派生出願についても本パイロットプログラムの適用を受けるには、派生出願において請願書の提出を含む上記の要件をすべて満たす必要があります。
(参考)
・USPTO announces Semiconductor Technology Pilot Program in support of CHIPS for America Program (govdelivery.com)
・Semiconductor Technology Pilot Program | USPTO
・Federal Register :: Semiconductor Technology Pilot Program
・分類対照ツール (jpo.go.jp)