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2024.06.07

特許部 木下遼祐

USPTO、適切な自明性判断を目的としたガイドラインを更新

2024年2月27日、USPTOは適切な自明性判断を目的としたガイドラインの更新を発表しました。今回の更新は、KSR判決及びそれ以後のCAFC判決で要求されている自明性判断に係る柔軟なアプローチを審査官に再確認させることを目的とするもののようです。

また、本通知は新たな運用を知らせるものではありません。しかし、もし、現行MPEPを含む既存のUSPTOの指針が本通知の内容と相違する場合があれば、本通知の内容に従うこととなります。

以下、更新内容の要点を記載します。※かっこ内は関連する現行MPEPの規定

I. KSR判決の時期的基準におけるAIAの影響
KSR判決により自明性を判断する際、AIAの下では同判決内の「発明が完成した時点」は「有効出願日時点」と解釈すべき(§2158)

II. GrahamテストはKSR判決後の自明性判断に用いられ続ける
KSR判決以後も多くのCAFC判決内でGrahamテストの重要性が強調されている。USPTOは、依然として自明性の客観的証拠を審査する際にGrahamテストに依拠する(§2141 I, II)

III. KSR判決に基づいた自明性判断の柔軟なアプローチ
A先行技術範囲を理解するための柔軟なアプローチ(§2141 II C、§2141 III、§2141.03)
B先行技術を改変する理由を提供するための柔軟なアプローチ(§2143、§2144)
C柔軟なアプローチは、明確な理由付けと証拠による裏付けの必要性を否定するものではない(§706)

IV.自明性の判断には、関連するすべての証拠を考慮しなければならない
自明性を判断する際、Grahamテストの3つの要素(先行技術の範囲と内容、先行技術と請求項の差異、当業者の技術レベル)に限定されるのではなく、4つの所謂二次的要素についても無視はできない(§2141 II)

V.自明性の判断において、適切な法的判断となるよう事実に基づく理由付けを行う
自明性拒絶に際し、如何なる場合も、特定された事実に基づき、請求の範囲に記載された発明が当業者にとって自明であることが導かれる合理的な理由付けを必要とする(§2142)

(参考)
https://www.uspto.gov/subscription-center/2024/uspto-publishes-updated-guidance-determining-obviousness
https://www.federalregister.gov/documents/2024/02/27/2024-03967/updated-guidance-for-making-a-proper-determination-of-obviousness

木下 遼祐
大学院博士前期課程修了の後、日本技術貿易(現NGB)株式会社に入社。修士(薬科学)。入社以来、化学・製薬・食品分野を中心とした外国特許出願をサポート。外国特許について権利化から他社特許対応まで幅広く対応。各国実務に関する情報収集・発信で顧客の知財活動支援も行う。

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