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2025.03.31

商標部 関口

【商標ニュース】カナダ商標法改正

カナダの商標法・商標規則の改正が2025年4月1日に施行されます(2025年2月26日付 Canada Gazette, Part II)。出願や更新の実務には影響ありませんが、悪意出願による権利濫用の防止や異議申立て等の商標異議審判部(TMOB)での手続き効率化が主な狙いです。

裁判所への差し止め請求には、使用の証明が必要

53条2項が改正され、使用義務が発生していない(登録から3年以下)商標を根拠に他者商標の使用差止請求を裁判所に申し立てる場合、これまで問われなかった使用(もしくは正当な不使用の理由)を示さなければならなくなります。登録3年以下で使用されていない悪意商標を根拠とした救済要請を防ぐためです。

公的機関の標章に対抗措置

カナダの公的機関の標章(バッジ、紋章、エンブレム等 / 以下、公式標章)は通称「スーパーマーク」と言われ、特別に強く保護され、商品・役務を問わず広くカバーすることが認められていました。これまで、公式標章に異議を提起したり、取消請求を行うことは、事実上困難とされていましたが、法改正により、その障壁が下げられることになります。公式標章所有者が実際には公的機関ではない、または機関が存続していない場合、第三者からの請求もしくは、登録官の権限にて、公式標章と同一・類似の商標の採用・使用の禁止が解かれます。公式標章であっても実際に機能していない、いわゆるデッドウッドを一掃していく狙いがあるとみられています。

商標登録官に新たな権限を付与

・異議申立て、取消手続きにおいて、登録官に費用裁定の権限が付与されます。これまでは、いずれの当事者も手続きに要した費用の回収はできませんでしたが、今後は登録官が費用裁定を行うことが可能となります。しかしながら、単に当事者間の費用負担を意図したものではなく、悪意の出願に対抗した案件や、手続きにおける当事者の不当・不合理な行為を条件とした制裁的な狙いがあります。勝訴側に無条件に認められるものではありません。

・TMOBでの手続きにおける宣誓供述書や陳述書等の提出書類は、これまで当局のウェブで公開されていましたが、今後、その一部に対し非公開とする機密保持命令を発するよう、登録官に求めることが可能となります。機密保持の可否は登録官の裁量によって決定されますが、機密とすべき理由や証拠の提出、相手方の同意等、条件も多いため、あくまでも例外的な規定とみられています。

・登録官によるケースマネジメントが可能となります。異議申立て、取消手続きにおいて、手順、スケジュールを規則通りではなく、効率的かつ費用対効果の高い方法で、案件ごとに変更、補足することができるようになります。例えば、複数の関連手続きを調整するために期限の延長を認めたり、効率性、機密性に鑑み、電話会議を招集すること等が可能となります。当事者側が、ケースマネジメントを正当化する可能性のある状況について登録官の注意を喚起するために、書面を送付することも可能です。いずれにしても、この権限も限られた条件下での行使となるため、あくまでも例外的に適用されるものと理解すべきのようです。

カナダ知財局通知

Amendments to the Trademarks Regulations published in Canada Gazette, Part II

 
情報提供:SMART & BIGGAR 事務所(CA)

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