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2021.04.08
特許部:前澤 徹
クレーム補正に伴って、明細書の「技術分野」及び「発明の概要」の補正が必要とされることがある旨が審査基準に明記されました。なお、クレームの記載のコピーに代えて「本発明は添付のクレームのとおり」と明細書に記載してもよいとされています。
クレームでカバーされない明細書部分に関する扱い:Part F, Chapter IV, 4.3(iii)
従前より、明細書とクレームとの不一致を避けなければならないことは審査基準に定められていましたが、この度の改定により、「クレームでカバーされない明細書・図面の内容」に関する扱いが明確化されました。
具体的には、補正されたクレームの特定の態様を強調させるために有用であると合理的に判断される場合を除き、独立クレームでカバーされなくなった実施形態は、「削除」または「クレームでカバーされない実施形態である旨の明確な表示」をしなければないことが審査基準に明記されました。同様に、特許性の除外(欧州特許条約(EPC)第53条(Exceptions to patentability))に該当する明細書の内容は、「削除」、「特許性の除外に該当しないように表現を改めること」または「クレームされた発明に基づかない旨の明確な表示」をしなければならないとされています。
さらに、「クレームでカバーされない実施形態である旨の明確な表示」としては不十分な例として、次のものが挙げられています。
・ クレームでカバーされない部分を示すことなく「添付のクレームの範囲に該当しない実施形態は、単に発明を理解するための好適な例として考慮されるべきである」といった一般的な文章を使用すること。
・ 単なる用語の変更。例えば、「発明(invention)」から「開示(disclosure)」への変更や、「実施形態(embodiment)」から「例(example)」や「態様(aspect)」などへの変更。
また、独立クレームの特徴に関連した明細書の記載には、「好ましくは(preferably)」、「~してもよい(may)」、「任意に(optionally)」などの用語の使用を避けなければならないことが審査基準に明記されました。
クレーム形式の明細書の記載(Claim-like Clauses):Part F, Chapter IV, 4.4
クレーム形式の記載は、明細書から削除するか、クレーム用語を避けるように補正しなければならないことが審査基準に明記されました。クレーム用語の例としては、「前項に記載の(according to the preceding clause)」、「第1項に記載の(according to the clause 1)」、「~を特徴とする(characterised in that)」、「~を更に備える(further comprising)」が挙げられています。
明細書の補正クレームへの適合:Part H, Chapter V, 2.7
出願人が、上記の審査基準に基づくEPOの求めに応じた補正をしなかった場合、次の段階として、口頭審理の召喚状が発行されることが審査基準に追加されました。
(参考)
・欧州特許庁の発表(2021年1月29日付)
https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/official-journal/2021/01/a6.html
・欧州特許庁審査基準(Part F, Chapter II, 4.2)
https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/guidelines/e/f_ii_4_2.htm
・欧州特許庁審査基準(Part F, Chapter IV, 4.3)
https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/guidelines/e/f_iv_4_3.htm
・欧州特許庁審査基準(Part F, Chapter IV, 4.4)
https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/guidelines/e/f_iv_4_4.htm
・欧州特許庁審査基準(Part H, Chapter V, 2.7)
https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/guidelines/e/h_v_2_7.htm